小説

□こっち向いて
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「キャッ、キャァッー!!」
と笑い声が部屋に響く。笑い声の主は先日生まれてきたばかりのリディアとエドガーの子どもである。リディアはまだ伯爵夫人としての仕事や、フェアリードクターとしての仕事が忙しいため、乳母にまかせることもあるのだが、仕事の合間をぬってはできるだけ我が子の面倒をみようと努めている。
少し抱き上げただけで喜ぶ我が子の姿は純粋で見ているだけで仕事のつかれが吹き飛ぶようだ。女の子であるこの子は伯爵家の跡継ぎにはなれないが、かねてから女の子がほしいと言ってきたエドガーは産まれてきたばかりのころは、片時も離れることがなかったぐらいだった。
「エドガーったら、親バカになりそうな勢いね。そうしたらきっとこの子がお嫁に行くのは難しそうだわ。」
今日はエドガーはいないが、普段はリディアが仕事の合間をぬって会いに来ると必ずエドガーがすでにいていつもいるのだからいつ仕事をしているか尋ねたいぐらいである。
しかし、そんなに赤ちゃんを喜んでくれるエドガーの態度を嬉しく思うのと同時にリディアは我が子に嫉妬する事がままあった。
3人でいるときはもちろん、二人でいるときでさえ話題はいつもこの赤ちゃんの話ばかり。本当に喜んでくれるのは嬉しいんだけど………
「もう少し……二人でいるときぐらい私のことを考えてくれたっていいじゃない……」
と、思っていたことが口からポロリと出てしまった。すると……
「リディア、もしかしてやきもきやいてるの?」
はっとして、戸口をみるとそこには嬉しそうな顔をしたエドガーがたっていた。それをみたリディアは聞かれたことがわかって顔が赤くなった。 
「き……聞いてたの?」
「聞こえたんだよ。でもまさかリディアが僕達の赤ちゃんにやきもきやいてくれるなんて……」
「なっ、なによ悪いの?」
もう聞かれてしまったので開き直り言うと、
「まさか、違うよ。うれしいんだ。そういえばそうだね。最近はこの子にばかりかまっていたからね。リディアはさびしかったんだよね。」
と言うと、にっこり笑って、 
「でも、大丈夫。僕は永遠にリディアのものだから。今日の夜はリディア、たっぷり愛してあげるね。」
と、リディアが恥ずかしがることをにこやかにいった。
「けっ、結構です!!」
さらに真っ赤になったリディアは今さっき言ったことおもいっきり後悔したのであった。
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