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□扉ノムコウ
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その日の夜にグレン島で不審な動きがあった。
人間の食料が尽きたのだ。
グレン島はカントーの外れ島であり、波乗り、空を飛ぶ等がないとタマムシやヤマブキに行けない。ポケモンを持っていない者が飢えをしのぐために、ポケモンを食らう。
その時期が来たのだ。
ポケモン屋敷はいつにも増して騒がしい。
「喰われるのはいやだ!!!」
「殺されてしまう!!!」
「お前がいなくなれば俺が食われずに済むはずだ!!!」
「お前を人間の餌にしてやる!!」
薄暗い屋敷の中で繰り広げられる争い。
皆の目は狂気に狂っていた。
「・・・来た」
「・・・え?」
彼女が少し強ばった表情で扉を見て静かに告げた瞬間屋敷内は一瞬にして静寂に包まれる。
ギ、ギギギ・・・・・・
錆びた金属を擦りながら開く扉。
そして屋敷は悲鳴で埋め尽くされた。
「旨そうなのがいるじゃないか」
「あぁ、ガーディとかな・・・」
「・・・!、あ、あぁ、う、わああ゛ぁぁあ!!!」
人間狂った、濁った瞳で良郎を見て怪しく笑った。
瞬間、自分が狙われてのだと悟った、刹那恐怖が全身を覆い衝動的に人間とは逆の方に逃亡した。
咄嗟に瓦礫の方に隠れ、息を必死に殺す。
心臓の音が漏れてしまうのでは無いかというくらい、脈売っていた。
頭の中は嫌に冷めていて体も内側から引いていく、そんな気さえした。
(皆、しんでいく。ねぇちゃん・・・へいきかな・・・)
周りの様子を見ようと体を捻った先に、濁った瞳があった。
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