‡桜月‡

□『ポインセチアの花言葉』
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SSL・X'masVer.

**『ポインセチアの花言葉』**


待ち合わせの場所に車でやってきた土方は、千鶴を見て驚いた。
いや、正確にいうならば、千鶴の、その周りにというべきか。

「土方先生っ!助けてください〜」

助けを求めてきた千鶴の足元には、見事なまでに紅に染まったポインセチアが、千鶴を囲むように配置されていた。

「お、おぅ。ちょっと待ってろ」

土方は千鶴を助手席に回収すると、次に大小様々なポインセチアの鉢を全て後部座席へと詰め込み、運転席へと戻って車を出し始めた。

「しかしお前、どうしてこんなに沢山の花に埋もれてたんだ?」

「それは‥」

土方の問いに、制服のスカートを直していた千鶴は、その手を止める。

「昼間皆さんがいらしたときに戴いたんですが、私が土方先生と此処で待ち合わせをしていると言ったら、その…沖田先輩が、このほうが先生が見つけやすいだろうからって…」

千鶴はすみませんと付け加えると、小さな体をさらに小さく縮め、膝に置いていた両手にキュッと力を込めた。

「予想はしたが、やっぱり総司の仕業か。お前は何も悪くねぇんだからそんな顔すんな。それより、なんだって示し合わせたようにポインセチアなんだ?千鶴、あいつらなんか言ってなかったか?」

「は、はい。私も不思議に思って聞いたてみたんですが、皆さん口を揃えて『クリスマス』と『御祝い』だからって。クリスマスっていうのはわかるんですが、御祝いって私には何のことだか‥」

「あいつら…まさかっ!!」

みるみる険しくなっていく土方の口調に、千鶴は不安そうにみつめた。

「先生?」

「あ、…あぁ、すまねぇ」

そんな視線を向けられては黙っているわけにもいかず、土方は車を減速して路肩に止めた。




「千鶴。ポインセチアの花言葉って知ってるか?」

「いえ。なんていうんですか?」

「“祝福”だ」

「祝福?」

千鶴は土方の表情を見ようとするが、車内はうす暗くなってきて表情はよく見えない。
道を照らすオレンジの光と、この日のために明るく装飾されたイルミネーションだけが、唯一車の中を照らす光として時折入ってくるが、それでも土方の表情を伺える程ではなくて。
けれど、千鶴は何故か土方が拗ねているように感じた。



「千鶴。手、出せ。」

土方は徐にポケットから何かを掴みだすと、隣にいる千鶴に差し出した。
千鶴は言われた通りに手を出すと、掌の中に小さな箱のようなものが一つ、トンッと納まった。

「開けてみな」

「は、はい」

千鶴は言われるままに箱を開けると、中には指輪が収まっていた。
千鶴が説明を求めて土方を見上げると、ぶっきらぼうに一言だけ告げた。


「それはお前のだ。」

「私の?」

「ああ。お前にプロポーズするために買ったもんだ。…本当はこんな形で渡すつもりじゃ無かったんだがな。」

「じゃ、じゃあ皆さん、それを知って?」

「挙ってポインセチアを渡してきたってことは、指輪を買ってる所を見られてたんだろうな。ったく、近藤さんまで一緒になって何やってんだよっ。俺がプロポーズするまえに祝福はねぇだろうが!」

「土方先生が怒ってた理由はそれだったんですね。でも私、皆さんの気持ち………嬉しいです」

「俺はちと面白くねぇがな。…………それで、だな、千鶴。祝福されるまえに………その、なんだ。肝心のお前の返事がまだ、なんだが」

土方はちらりと千鶴をみやると、千鶴は不思議そうに、そして当然のように答えた。

「私が土方先生からのプロポーズを断る訳ないじゃありませんか!現世でも土方先生と……歳三さんと添えるのですから、嬉しいに決まってます!」

「そうか」

土方は千鶴の頭を引き寄せると、そのまま腕の中に抱えた。
千鶴の一言に、土方の声が僅かだが明るくなったように聞こえる。

「こんなに沢山の祝福を戴くなんて、私達は幸せ者ですね」

「ああ、そうだな。」


「現世でも俺がお前を掻っ攫っちまうからな。あいつらが泣いた分も必ず幸せにしてやる」

「どうして皆さんが泣くのですか?」

相変わらず土方以外の好意には疎い千鶴に、さすがの土方も、千鶴に好意を抱いてきた者達に同情した。


だが、こればかりは譲れない。
千鶴の幸せは、土方だけでなく、深紅の花に託した皆の願いなのだから。

「よろしくお願いしま…」

頬を染めた千鶴の答えを聞くが早いか、土方は助手席の千鶴におおいかぶさるように、千鶴の唇に軽く触れ、ニヤリッと笑んだ。




「そうだ、もう一つ忘れてた。千鶴」

「は、はい」



「Merry christmas」




End



萌神様、来るのが遅いよ!
X'masもう終わっちゃったし、タイミング外しまくりだようっ!(泣)
さすがにUpして良いかまよいましたが、せっかくなので出すことにしました。


SSL、初書きなのでお見苦しい点は御容赦くださいね。
難しいよ(…遠い目)

そして追加として、先生と言わせてみました。うん、しっくりきた!

リベンジ的に後日談かきたいかと。
よければそちらもお付き合いください。
では!

2010、12、26


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