Rose branches
□Rose branches -34
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問えないことが、いくつかある。
何でもない関係なら聞けたはずのことが。
今となっては、確かめる術を失っている。
これまで、どんな主人に仕えてきたのか。
契約を終えたら、すぐに魂を喰らうのか。
…恋人は、いたことがあるのか。
(この質問は胸を過ぎるのさえ苦しい)
そして、僕とお前のこと。
シエルは隣に横たわる白い胸板を指でなぞりながら、その奥に隠れているはずの答えを探した。
「お休みにならないのですか」
いつもその行為のあと、シエルは疲れた身体を(意図せず)自分に預けて、深い眠りに落ちる。
嵐が過ぎ去ったあとの凪。
過不足の無い透明な時間。
今夜に限って、十五分経っても、瞬きを繰り返しながら少し不満げな顔をしているのは何故だろう。
「ん…」
セバスチャンはたどたどしく自分の胸板を行き来している手を取ると、中指と薬指の間に優しく口付けて言った。
「嗚呼…もう一度、してもよろしいのでしょうか?」
「…っ」
顔を赤らめて、その手を振り解く。が、下腹部に伸ばされたセバスチャンの指先が、くすぶっていた燠火をかき立てる。
「やっ…」
したくないわけでは、ない。
ただ何度も自分から求めるのはできないと、いつも思っている。
「だ、め」
「可愛らしいですね…」
口に出せない問いの答えは、この行為で得られるのだろうか。
幾度貫かれても決して収縮をやめないその場所が、再びセバスチャンを受け入る。咥え込んで、離すまいとするかのようにきつく反応する。
先程散々慰撫されたはずの一点が、また強く擦り上げられ、止めようのない声が溢れた。
「あん、はぁ、んっ…」
「ん…っ、はぁ…たまりませんね、貴方の身体は…」
「そん…な…ああっ…、セバスチャン、ん…っ」
刺激に慣れてきたところで、角度を変えられる。激しい出入り、逃れようとする動きを封じる指の力。
「セバスチャンッ…、お前は…、僕だけの…っ、もの、か…?」
「当然…ですよ」
それは現在という短過ぎる一瞬だけでなく、過去においても、未来においても、そうか。
問えない言葉の代わりに、せめて自分はそうであると伝えようとしても。
僅かな負の可能性が、その告白を押し止める。
「ああっ…、セバスチャン…ッ」
(僕は…魂だけでなく全て、お前のものだ、などと…お前は…望んでいないかもしれない)
怖かった。
全てを、その不安が押さえつけていた。