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□『私の青い蝶』『私の青い蝶2』『私の青い蝶 完結編』(小説)
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「私の青い蝶」


 コンコン・・・
 セバスチャンはノックしてみても、一向に返事のない主に訝しむ。
 「失礼致します」
 それでも執事である以上、礼を尽くさねばならない。
 悪魔になったシエルは、仕事をする必要から解放され、一日の大半は、今セバスチャンが訪れている図書室に籠もる事が多くなった。
 誰にも邪魔される事なく、穏やかに本が読めるのは、何年振りだろう・・・
 入室してみても、主の姿はない。
 (はて?どちらにいらっしゃるのか・・・)
悪魔の力を総動員しなければ、最近はシエルの気配を感じる事は出来ない。
シエルがわざと、セバスチャンから逃れる為に、気配を殺す術を使って、ゲームを仕掛けるからだ。
 どんなシエルもセバスチャンに取っては愛しい存在。
 直ぐに見つけられてしまうので、シエルは多少不機嫌になる。
 そんなシエルを抱き締め宥め、誑かし、ベッドの中で啼かせるのは朝飯前・・・誘惑する事は悪魔の常套手段だからだ。
 シエルが座っていたであろうソファーに青いリンプンを見つけたセバスチャンは全てを悟る。
 「またあちらですか・・・フゥ・・・いったいいつになったら、私を信じて下さるのか」
 セバスチャンは儚く微笑み、手を大きく広げ、シエルのゲームに乗る為に変化する。
 シエルが悪魔として蘇ると聞かされ、本能はシエルの死を望み、止める事も出来ずに、シエルの腹を手刃で貫いたセバスチャンだった。
 事ある事にその事を持ち出され、ネチネチと嫌味を言われるのだ。
 悪魔であるから、まともな神経を持ち合わせていないと言う訳ではない。
 只、自分の欲望に正直なだけ・・・
 だからその罪を償うべく、シエルが隠れた時は、セバスチャンが探し出すのがルール。
 別にシエルが命令した訳ではない。
 暗黙の了解で、セバスチャンは行動するだけ。
 青い蝶に変化したシエルは、案の定、白いバラの上で、気持ち良さげに、眠っていた。
 セバスチャンは何故か悔しくて、シエルの唇を塞ぐ。
 「んっぐっ・・・んん・・・」
 シエルは突然の事に、対処出来ず、己の舌に絡みつく、肉厚の舌に翻弄された。
 抗議しても無駄な事は学習しているが、一度はセバスチャンをやり込めたいと言う願いが、シエルを窮地に追い込むのだ。
 ハァハァ・・・
 「何するんだセバスチャン!いきなり僕を襲うなと何度言えば解るんだ。もうお前は、僕が人間であった時も、契約違反したんだから、ちゃんと命令は守れ!」
 苦しい息の中、シエルは凛とした態度は崩さない。
 セバスチャンの背筋にゾクゾクとしたモノが這い上がる。
 「それでこそ、わが主。坊ちゃん貴方には、私の溢れんばかりの愛を・・・」
 言いながら、セバスチャンはシエルを白薔薇の褥に押し付ける。
 「馬鹿・・・僕はお前のモノだ・・・もう僕の手を離すないつまでも共に在れ永遠に・・・」
 いつになく素直なシエル・・・
 「そして、私は貴方のモノ・・・永遠に。死が二人に訪れる日まで」
 誓いの様なシエルの言葉に、セバスチャンは微笑む。
 シエルはセバスチャンの首に手を回す。
 青い蝶に変化したシエルに覆い被さる黒いアゲハ蝶。
 セバスチャンの変化した姿だ。
 二人の頭から生えた触覚をすり合わせ、お互いを昂ぶらせていく。
 シエルは見る間に全裸にされ、セバスチャンにいい様に啼かされるのだ。
 いつ果てるとも知れぬ命・・・
 退屈を嫌うシエルは、際限なくセバスチャンを求め、魂を喰らえなかったから、セバスチャンはシエルの身体を求める。
 お互いの精気を吸いあい、どこまでも堕ちていく二人・・・
 二人ならどんな事も耐えていける。
 明るい陽光の中、二人が変化した蝶が絡み合う。
 まるで、青い蝶が黒い蝶に喰らわれる様に・・・
               FIN
H23.12.18 P11:20


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