ReBirth
□ReBirth -01
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「相手になれ」
昼間、使用人達が荒らした雪の庭に、新しい無数の六角形の花が舞っていた。
埋もれた薔薇の芽を救い出し、地下倉庫の扉の雪をどかす。
冴え冴えとした空気の中に、ベルの音が響く。セバスチャンは手を止め、燕尾を翻して館へ向かった。
「お呼びですか」
暖かい書斎の中で、振り落としきれていなかった雪の花が崩れてゆく。
「イライラして眠れん。僕とチェスをしろ」
シエルは先程、百歩譲って示したソーマへの厚意を無下に断られていたのである。
「御意。…しかし、よろしいのですか?私が相手で」
悪魔であるセバスチャンが、人間に負けるはずもない。最初から結果の見えている勝負は、シエルにとって面白いのだろうか。
「構わん。時間を潰したいだけだ。手加減するもしないも、お前の自由だ」
「ふ…わかりました」
一度目のゲームが終わったとき、シエルの苛立ちはほとんど消えていたが、物足りない、という色を青い瞳に浮かべていた。セバスチャンは一度ナイト・ティーを淹れに階下へ下り、再びシエルのいる書斎へと戻った。
シエルはばらばらに倒れたチェスの駒をそのままに、ぼんやりと窓の外の雪を眺めていた。
「申し訳ありませんが、上着を脱いでもよろしいですか?」
「何故」
「先程まで雪かきをしておりましたので…湿気が篭っている、とでも言うのでしょうか?」
「…構わん」
「では…」
燕尾服を脱ぐ仕草とナイト・ティーの香りが、刹那、頭の中を幻惑する。
「一回戦は私が黒でしたので、次は白を持ちましょうか」
シエルは頷きながらも、ぼんやりと自分の前に白の駒を並べていた。
「…白と黒、両方使うおつもりですか?」
白いシャツのセバスチャンが、目の前で嗤っている。
「な、並べてから、ひっくり返そうと…」
シエルは慌てて白の駒を向こうに押し遣った。その白い手首に、手袋の白が重なった。