The Secret Garden

□The Secret Garden-02
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 卑屈な森は鬱蒼として、濃く深い霧を吐きだしたまま沈黙を続けていた。
 全く風の吹かないわけではない。のみならず太陽も時折、気まぐれにはその足をのばした。だが冷えた森の底をあたためるほどではなく、森もどこか光を拒絶しているようだった。

 霧は肉色だったり、乳白色だったり、様々に表情を変えて漂っていた。蜥蜴や野鼠が苔むした倒木の上を走っていき、緑色の蛇が獲物の逃げたほうへ鎌首をもたげていた。

 頬が湿り、帽子や外套に細かい水滴がついた。
 遠くに聞こえる鳥の声、ぬかるんだ足元―…。

「ねぇ、帰りましょうよ」

 誰かの声がした。それとも僕の声だろうか。

「寒いわ」

 寒いわ。寒い。寒い―…。

 霧の奥に燕尾服が揺れる。

 寒いわ。待って。寒い。

 どうかあたためて。



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