The Secret Garden

□The Secret Garden-04
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「…夜は、不思議だな」

 ベッドに腰かけたシエルは、青い石のついた指輪を外しながら小さな唇でつぶやいた。
 声のすぐ下ではしなやかな指が動き、手際よくカバード・ボタンが留められていく。

「色が塗り替えられるわけじゃないのに、色が見えなくなる…」

 眼帯の紐が解かれる。前髪に、額に、柔らかい手袋の指を感じた。

「色が見えるには、光が必要なのですよ」

 セバスチャンは枕をふくらませ、主人を促した。

「光が?」
「ええ。物体は光を反射させることで、自らを見せているのです。赤い薔薇は赤以外の色を吸収し、吸収できなかった色を反射させています」
「ふうん…じゃあ、昼と夕方で空の色が変わるのは?」
「それはですね、太陽の高度も関係していまして…さ、今日はもうお休み下さい。詳しいことは、今度先生に教えて頂きましょう」
「うん」

 首元や肩が寒くないよう、布団の上から軽く押さえて、耳たぶにキスをした。

「…じゃあ、お前が黒く光っているわけじゃないんだな」
「ふふ、まぁ、そうですね」
「お前にも、僕にも、光は注がれているんだな…」

 紅茶色の瞳は静かにシエルをとらえた。が、視線は重ならなかった。

―Good night.

 宝石のような瞳が長い睫毛に包まれる。

(……)

 セバスチャンは踵を返して数歩ドアに近付き、立ち止まった。

 しばらく、傍から離れがたかった。



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