The Secret Garden
□The Secret Garden-04
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黒い上着を脱いで、煙突型のグラスに手を伸ばす。
冷たい水で喉を潤すと、穏やかな一日の終わりを感じた。
金糸の刺繍がほどこされたスレートグリーンのガウンを羽織り、ベッドに横になった。
眠るわけではない。が、朝まですることがあるわけでもない。
主人の安眠を妨げないよう、静寂を保つのが習慣になっている。
セバスチャンは自分の部屋が気に入っている。
窓には規則正しく開け閉めされる清潔なカーテン、傷一つない床の上には使いやすい調度品。
クローゼットには新品のテールコートが何枚も入っており、シャツもネクタイもベルトも有り余るほど支給されている。
服が欲しいと思ったことはないが、身なりをととのえておくのは執事の美学である。
(スコーン、ミルフィーユ、ディープパイ…)
明日は何を作ろうか?厨房にある材料と、今までに作ったものを、長い指を折って数えた。
(牛たたき丼、ロールキャベツ…)
作った自分は覚えている。
Eeny, meeny, miney, mo,
(数えきれない)
Eeny, meeny, miney, mo,
(数えきれないほど)
Eeny, meeny, miney, mo.
(数えきれないほどたくさんの魂を喰った)
―創った者は覚えているのだろうか。
(スコーンも、ミルフィーユも、ディープパイも…作ろうと思えばいつでも作る
ことができる)
だが、
XXXは
XXたら二度と
XXXない。
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