The Secret Garden

□The Secret Garden-07
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 蝋燭の火を眺めながら、シエルは頬杖をついた手が赤くなるまで、物思いに耽っていた。

 火は蝋を溶かして天辺から溢れさせ、溶けた蝋は重力によって一直線に流れてゆく。固まる瞬間というものが存在するだろうかと目を凝らしていると、新しい蝋が上から流れてくる。先刻の流れは、下のほうでいつの間にか固まっている。

 火がまた新しい蝋を流す。繰り返しのようでありながら、それは単なる繰り返しではない。火が燃えれば周囲はあたたかくなり、蝋燭は短くなる。


 …果たして「永劫回帰」とは?

 (それは「永遠」とは違うもの、「ある一瞬の繰り返し」である)

 物理的否定を入れずに一つの思想として考えた場合、思い起こさなければならないのは…

 …僕は「無限」を知っている。

 それはごく身近に存在する。それは―…。


 切れのよいノックの音がし、シエルはドアのほうへ顔を向けた。

「ああ、入れ」
「失礼致します。ラベンダーのフレーバーティーをお持ちしました」

 夕食後に書斎まで運んでくるよう、シエルが命じたのである。
 言いながらセバスチャンは、ちらりと机の上を見た。
 黒い本が、金の栞を挟んだまま置かれている。

「考えごとでございますか」
「うん…」

 気高い香りの中、赤い瞳がシエルの顔をしみじみと眺めた。

 可憐なシエル。
 小さな伯爵。愛しい私の主人。



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