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□for 不死蝶企画 01
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「あっ…!」

 上空からの攻撃を察知し、ロナルドが素早くウィリアムとグレルをかばう。セバスチャンが投げたシルバーはデスサイズが起こした刃風に煽られ砂地の上に深々と突き刺さった。ウィリアムは片手でデスサイズを支えながら、もう片方の手で眼鏡を直して空を睨んだ。

「害獣!」
「きゃー!セ・バ・スちゃーんお久しぶりー!相変わらずイイ男DEATH☆」
「これはこれは死神の皆さんお揃いで、こんな海の果てまで魂を回収に来るとは随分ご精が出ますねぇ」
「黙りなさい。一度貴方がたに奪われ蝶の形に転生した魂、今までどこに眠っているのか不明で回収が出来ませんでしたが、ここにあると知ったからには我々の手で勤務時間内に処理してみせます」
「おーっ!定刻主義、そうこなくっちゃ!」

 セバスチャンは三人を眺め、グレルのデスサイズによって岩が崩れかけているのを見て取ると妖艶な微笑みを浮かべて語りかけた。

「グレルさん」
「えっ?えっ?」
「ふ…レディ・ファーストは充分承知の上ですが、どうしても貴方の奥のほうに突っ込んで手に入れたいものがあるのです。しばらく、無防備な体勢で私を迎えてくれませんか?」
「なななな、なんてハレンチなことを昼間からー!でもいいわヨセバスちゃーん、ウェルカムトゥアタシの中ーっ!!」
「グレル・サトクリフ、何を馬鹿な!」
「アタシとセバスチャンの愛はまさにフェニバタフラァァァイDEATH!!☆」
「うわー…サトクリフ先輩そのポーズきっついDEATH…」

 ウィリアムが阻止しようと伸ばした手を振り切って、セバスチャンは岩の間隙から身を滑らせ中へ飛び込んだ。その姿は一匹の青い蝶に変わっていた。

「待ちなさい!…くっ…、グレル・サトクリフ、はやくその岩を崩しなさい、蝶を掠め取られたら減給ですよ!」
「ええーっ!そ、そんな…フンガッッ!!」

 グレルのデスサイズが低い唸り声を上げ、岩の亀裂を押し広げた。

「ぶはっ…!蝶がいっぱい出て来たっ…!」
「いた!あそこにっ…!」

 ウィリアムのデスサイズが蝶の群れの中にセバスチャンを見つけ、空を切り裂いて襲いかかった。






「は…嗚呼……」

 セバスチャンは転生したシエルの魂を連れ、ファントムハイヴ邸の跡に舞い降りた。死の島の力を離れたそれは蝶ではなく生前のシエルの姿に変わり、セバスチャンの腕の中で蒼ざめていた。かつて歴代当主の肖像画が見下ろしていたマーブル・ホールの床には崩れた壁や柱が白く積もっていた。

(自分が執事だった頃なら…こんなままにはしておかなかった…)

 セバスチャンは蝶から人へと姿を戻し、死神によってつけられた傷をおさえた。

(嗚呼、坊ちゃんのシネマティック・レコードが)

 シエルを抱き寄せ、白と黒の朽ちかけた床板の上でそっと目を閉じた。契約が完了した際にシエルの魂と共に取り込んだシネマティック・レコードはセバスチャンの傷口から流れ出、まるで蝶の羽ばたきのように音もなく二人を包んだ。






「…バスチャン、セバスチャン」

 はっと開けた目に続いて、他の器官が感覚を取り戻す。

「何をしている。此処はそんなに寝心地がよくないぞ」
「…坊、ちゃん」

 腕の中で、シエルの大きな瞳が自分を見上げていた。




END




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