Rose branches

□Rose branches -38
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「ふ…」
「痛いですか…?」
「いや…」

 難破船のような部屋が、大きく傾いたように思った。
 
 右手でそれを握り、母指で先端をいやらしく刺激する。熱くなり、忽ち液体を溢れさせるそこは湯を注ぎすぎた小さな銀器のようだった。思わず唇で掬い取ると、好ましい味が舌の上に広がるのを感じた。

 そのままシエルのそれを口に含み、かいがいしく奉仕を続ける。

 下腹部で揺れる真っ直ぐな黒髪と、眉一つ動かしていない表情の端正さ。

シエルは少し身体を起こすと、セバスチャンの喉の奥へと自分自身を突き立てた。

「ん…っ」
「苦しい、か?」

 咥えたまま、微かに黒髪を振り、更に激しくしゃぶる。静かな部屋に水の音が響く様はまるで、水圧に負けた船室が少しずつ最後のときを迎えようとしているかのようだった。

「…まだ…」

 そう呟いて、絡みつく口腔から自分自身を引き抜く。

 セバスチャンを促して、自分の上に跨らせる。セバスチャンはシーツに手をついてゆっくりと腰を下ろしながら、初めて少し眉根を寄せた。

「…少々、お待ちを」

 そう言って自分の指に舌を這わせ、内側から手を入れてその場所を解そうとする。

「僕を、待たせるつもりか?」
「…、いえ、そのような」

 戸惑う声が、奪われかけていた舵手を掴み直させる。

「…下ろせ」

 シエルがそう命じると、セバスチャンは諦めたようにそこから手を離し、シエルのそれを引き寄せた。

「……っ」

 充分に拡がっていないそこに、熱いものが侵入する。角度を変えながらシエルのそれをなんとか飲み込み、大きく息を吐く。




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