Rose branches

□Rose branches -38
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「は…あ…、坊ちゃん…」
「何度も、言わせるな。僕を、待たせるつもりか」
「申し訳、ありませ…、…っ」

 きしむ痛みを噛み締めながら、腰を上下に動かす。

「ん…、は…あ、あっ…」

 シエルが満足するように。その思いと、自分の欲と、痛み。

 散らばっていたものが、身体を揺らすごとに溶け合い、悦びに変わってゆく。

「も…う、坊ちゃん…っ」
「淫乱な執事だ…な、女の代わりに、僕の相手をするなど…」
「ん…っ、女になど、味わわせません…よ、こんな…」

 再び水音が迸り始め、冷たいはずの身体に熱が滲んでゆく。

「…ても、よろしいでしょうか?」
「何…、」
「これを…、しても、よろしいでしょうか?」

 シエルが頷くと、セバスチャンは右手で自分自身を握り、扱き始めた。

「ああ…、は…ん…っ」
「どっちが気持ちいい?前と、後ろと…」
「も…ちろん、坊ちゃんの…が」
「じゃあ、前はしなくてもいいのか?」
「…い…え、それ…は…っ」
「本当に、淫乱だな…?」

 言葉をかける度に、セバスチャンの中が狭まり奥へと引き込もうとするのを感じ、シエルは愛しそうに乱れた黒髪を撫でた。

「…、もう…すみませ…っ」

 尾を引くように細く高く声を吐いて、執事はそれを迎えた。

「ん…っ」

 一層引き締まったその奥に、白い液体が溢れる。

 セバスチャンはシエルの胸に頬を当て、汗ばんだ額の下でそっと目を閉じた。

「は…あ、ん…、しばらく…聴いていても、よろしいですか…?」
「ああ」
「…」
「…真似じゃなくて…一緒に、眠ろう」
「…イエス、マイロード」

 セバスチャンの背中を抱き締め、黒髪に顔を埋める。

「月…」
「え…?」
「いや、…ここは心地いい…波打ち際のように…そのまま引きずり込まれるとしても…」

 水に満たされた船がゆっくりと、溟渤の底から浮かび上がるのを思った。

 眠らない船はベルベットのような空を連れて、いつか月に別れを告げるのだろう。


 END
(2012/05/20/午後 UP)


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