Rose branches

□Rose branches -03
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「パーティーが楽しみだね…あのクソガキ、うんと虐めてやるんだから」

 窓の外には単調な冬の景色が続いていたが、グレイは面白いものでも見えているかのように、楽しげな声でそう言った。

 ファントムハイヴ邸からの帰路、二人を乗せた馬車は急ぐでもなく、乾いた音を立てて人影のほとんどない郊外を走っていた。

「あの執事にも、お返ししないとね」
「…あいつは、気をつけたほうがいい。報告によれば…」
「わかってる。マフィアを一人で壊滅させた、イカれた連続殺人犯もあいつが仕留めた可能性がある…でもそんな奴、このまま放っておけば英国王室にとって脅威になりかねない。…」

 二人はしばらくの間沈黙して、枯れた身体に緑の寄生木をつけた木が並んでいるのを見送った。王室の影はファントムハイヴだけではない。秘書武官である彼らもまた、ときに闇の中で血を流すことがある。今まで何度、そうしたことがあっただろう。そしてこれから先どれくらい、また血を流すのだろう。

「ねぇ、でも、さっきのフィップス、ちょっとかっこよかったな…あのガキも、すぐ諦めてたしね」

 不意に冷たい景色から相棒に視線を移し、グレイは言った。その瞳は熱っぽく、陶然としていた。

「…貴族だけの義務があるなら、お前の義務は?」

 フィップスの横に座り直し、大腿の上に手を置く。ズボンの上からその場所をなぞると、はっきり固くなっているのがわかった。

「この剣の義務は…?」

 フィップスの指先をくわえて黒い手袋を外し、自分の手袋も同じようにする。緩やかな行為は猥褻な欲を煽った。ベルトを取り、勢いよくあらわになったフィップスのそれを口に含む。

「ん…むっ…んん…」

 狭い空間の中で、いやらしい音が響く。グレイが自分の足元に跪いているのは、いつ見ても不思議な光景だとフィップスは思った。

「お前は、…それが、好きだな」
「それって…んっ…何…?舐める…こと…?……っ…それとも、」

 グレイはフィップス自身を顔の前に翳し、舌を這わせながら上目遣いで尋ねた。

「フィップスの…コレ?」

 すると急に馬の嘶きがし、馬車が道を外れた。王室の紋章は木々に光を遮られ、影に沈んだ。馬車は大きな林檎の木の下に入り、そこで止まった。

「お前等、言っておくが、丸聞こえだからな」

 突然開かれた扉から、饐えた林檎の匂いが忍び込む。ジョンの表情はゴーグルに隠れていて、わからない。

「ジョンもおいでよ」

 グレイは悪びれもせず、ジョンのほうへ手を伸ばした。

「ボク、口が寂しくなるから」

 ジョンは馬車の扉に手をかけたまま、ため息を吐いた。躊躇うように外に目を遣った後―その瞳を拒絶できずに、馬車に乗り込む。

 フィップスはグレイの腰を引き寄せ、臀部を剥き出しにさせた。黒子一つない真っ白な双丘は、焼く前のパン生地のようにしっとりと柔らかい。自分の指を舐めさせ、桃色の秘部に挿れる。そこは適度な強さで収縮し、侵入者を奥へ奥へと誘った。

「ジョンの…久しぶりだね」

 自分の座っていた場所にジョンを座らせ、ベルトを外す。まだ勃起していないそれを舌で転がすと、渇いた唇から微かな声が漏れた。

「は…」

 曇りかけたゴーグルを取り、なすがまま、下腹部の水音を聞く。宮廷の貴族の中で誰より一目置かれているグレイの、知られざる性癖。それは彼らが葬るどんな王室の秘密より、闇に塗り込めなくてはならないものかもしれなかった。

「ん…ぶっ…んんっ……ねぇ、ジョン、気持ちいい…?」
「…ああ…」

 フィップスは、物言いたげに上下する白い腰を押さえ、ゆっくりと自身を突き立てた。

「ん…んんんっ…」

 グレイの舌の動きが止まる。

「ほら…お留守になってるぞ」

 満足させてやるために、口の中に突き立てる。

「ンーッ…、んっ…んっ…!んんっ…」

 狭い秘部に激しく出し入れしながら、グレイのそれを握ってやると、柔らかい壁が更に引き締まった。

「んっ…!…っかは…っ、ジョンの、濃い…っ、あっ…や…そこ、フィップス…そんなに、だめっ…!ああっ…」

 二人はほぼ同時に達した。グレイのそこからは入り切らなかったものが溢れ、大腿を伝った。

「…お前等、息ぴったりだな」
「…」

 フィップスはやや赤面すると、クッションを取ってグレイの身体を寝かせてやった。

「グレイ、かき出すぞ」
「んん…、それ、すると、また欲しくなる…」

 ジョンは再び深いため息を吐き、後は任せた、と呟いて外に出た。

 馭者台に戻り、手綱を握る。

(義務じゃない、権利だ。私には半分しかない…)

 車体が僅かに軋んだ。林檎の落ちる音を聞いたように思った。



END



<本当にすみませんでした…!>

(2011/09/08完成)
 

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