Rose branches
□Rose branches -20
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「ん…っ…あぁ…っ、グレイ、苦し…っ、そこ…すご…、は…あっ…!」
四つん這いで、必死にシーツを掴む。
時計を見る余裕などないが、行為を始めてから恐らく三時間は経っていた。吐き出したものを拭った紙が、ベッドの周りに散らばっていた。
向きを変えられ、視線がぶつかる。
「ここ、勃ちっぱなしだね」
「あ…っ、ん…、くっ…」
胸の突起を舐められ、身体にぞくぞくと快感が走った。フィップスは渇いた喉から喘ぎを押し出した。固くなり続けているのも無理はない。突き上げられるたびに、紅いみずみずしさが震えた。
「うっあ…激し…、い…いい、ん、い、いくっ…、グレイ、あっ…ふっ…」
恥ずかしそうに顔を隠しても、感じきった身体は隠せない。繋がった場所からは、繰り返し透明な液体が溢れた。
†
「じゃあ、おやすみ」
少し長い髪を揺らして、斜めに顔を傾ける。
仄かな暗がりで、白銀の髪は確かな居場所を占めていた。
初めて終えた仕事、与えられた部屋。
「……」
入浴を終え、ズボンだけを履いて、白いコットンの寝間着をベッドに置く。自分で縫った衣類だけが、宮殿に持ってきた唯一の荷物だった。
(ボクが陛下に仕えるときは、フィップスも一緒だからね)
子供時代の、半ば強引なその約束は、絶対に守ると誓っていた。
今まで伯爵であるグレイとは全く違う生活をしていたのに、今日からは同じような部屋で暮らし、同じ食事をとり、同じ仕事をする。
同じといってもグレイのほうが多少優遇されていて自由でもあったが、フィップスにとっては嬉しいことだった。
軽やかに舞う小柄な体は、目を閉じれば浮かぶ。グレイのことを考える時間は、時間を追うごとに長くなっていた。
(Wチャールズって呼ばれてるらしいよ、ボクたち)
その呼び名は誇らしかった。離れたくない。誰にも邪魔されたくない。
着替えようとしていたフィップスは、微かなノックの音に手を止めた。
シャツを羽織って出迎える。立っていたのは、枕を抱えたグレイだった。フィップスはびっくりして、寒い廊下から中へと招き入れた。
「どうしたんだ?」
「あの…」
蒼ざめた顔で口ごもる。
白銀の髪が、少し乱れていた。
「…眠れそうになくて」
怯えた瞳を見れば、原因は言わずもがなだった。沢山の使用人がいる住み慣れた屋敷に比べ、バッキンガム宮殿の端にある執事部屋は、怖いのに違いなかった。
「一緒に寝るか」
「…うん」
グレイはほっとした顔で頷き、持ってきた枕を置いた。三本の蝋燭の炎を一つ消し、もう一つ消そうとして、グレイのために残す。
「…寝間着は?」
「あ…置いてきちゃった」
「俺のでよければ、着るか」
「あ…ありがとう」