Rose branches

□Rose branches -20
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 フィップスは寝間着を渡し、シャツのボタンを留めてベッドに入った。背を向けて着替え終えたグレイの、たくし上げた袖から、細く伸びた白い腕が見えた。

 もう一度、おやすみを言い交す。

 フィップスはつくづくと、こちらを向いて目を閉じたグレイの顔を眺めた。白い睫毛の束が、薄い灰色の影を落としていた。コスモス色の唇は、暈もなくくっきりと色づいている。細かい白のうぶ毛が覆う肌、ふわりと乗せた髪。
 その頬に触れたくて、指先が震えた。起こさないように、あと5分待とう、10分待とう、そう時計を気にしながらグレイの寝顔を眺め続けるうちに、いつの間にか眠ってしまっていた。







「今日、少し眠そうだったよね」
「…ああ」

 当たり前のようにフィップスのベッドに潜り込みながら、二本の蝋燭に照らされた大きな瞳を向ける。
 グレイはすっかり、フィップスの部屋で寝ることに決めてしまったらしかった。

「ボクと同じだけ、寝てるはずなのに」

 お前の寝顔を眺めているせいだ、とは言えない。

 黙ったまま、フィップスは目を閉じた。

 見ないようにすれば、気にならないかもしれない。そう思ったが、見えない分、グレイの立てる衣擦れの音や、小さなため息の一つひとつが気になった。
 今、細い眉はどんな曲線を描いているのか、蝋燭の明かりはどんな風に、薔薇色の頬を輝かせているのか。

 堪えきれずに目を開けると、グレイはまだ自分を見ていた。

「…っ」
「フィップス、すごく怖い顔してるケド、お腹でも痛いの?」
「い、や…」
「じゃあ、何?」

 慌てて背を向け、何でもない、と呟く。

「何でもなくないじゃん。何怒ってるの?」
「怒ってない」
「ふうん?」




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