Rose branches

□Rose branches -21
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<鬼は窓から中の様子を覗き、はっと首を縮めた。
身体の中を、霆撃が走り抜けた様に思った。豆をぶつけられるより、大きく動揺した。

自分と同じ負の者、口に咥えた朏魄のような金平糖。

鬼は身体を伸ばして、もう一度中を見た。>


 最後の一つはなかなか溶けようとしなかった。

 ゆっくりと、そのごつごつした感触を味わう。ごつごつが滑らかになり、ざらざらになり、舌の上に散る。

 セバスチャンはシエルの前に跪き、ズボンの前を開けて愛撫を始めた。

「ん…あっ…」

 柔弱に血が巡り、固く張りつめ、舌の上で白いものを散らす。

「良い春を迎えられました」
「馬、鹿…」
「ふ…彼の国では、遊女に太巻きを咥えさせる猥褻な遊びもあった、とか…、全ては、『春を迎える』ためでございましょう」
「…」

 シエルはふと、何のために節分に豆撒きをしたいと願ったのかと考えた。

 ドラジェが、楽しみだったからか。

 最初は、そうではなかった。

 恐らく、家の中に悪いものが入ってこないように、お父様とお母様に幸福が訪れるように…そう思って始めたのだ。

「部屋に行く。お前は厨房を片付けてから来い」
「御意」

 シエルが出て行くと、セバスチャンは「さて…」と呟いて、窓の一つを勢いよく開けた。


―豆撒きをしないと、本当に鬼がやって来るのですね
―…
―…
―何故…
―しなければ、飢え死にします
―其の事ではない…
―…も、なければ飢えます…

「覗かないのならば、其処で夜明かしをされても構いませんよ。当家の家令があとで、豆を撒くかもしれませんが」

 セバスチャンは微笑んで、窓を閉めた。

 鬼は肩を竦め、月の無い空を見上げた。



「遅かったな」
「鬼がおりましたので」

 怪訝そうなシエルの表情に覆い被さり、再びズボンのベルトに手をかける。

「…セバス、チャン…」

 シエルの口の中にはまだ、甘味が残っていた。

「は…ぁ…」

 糸を引く唇を見つめ、燕尾服の襟を両手で掴む。

「僕に福が来るようにと…言ったな」
「…ええ」

 僕も、お前の幸福を願っていいか、と。

 笑われる気がして、口には出さずに、そっと、黒い肩に額をつけた。

「…いっぱい、しろ」
「坊ちゃん」
「…お前の、好きなように」
「…できませんよ、そんな乱暴には」

 場を弁えず食堂で始めた、自分の性急さをそっと閉め出す。

「ふ…乱暴なのが、好きか?」
「貴方が乱れ、悶えて下さるのが一番です」

 服を脱がせ、雪白の肌に齢の数よりも多い口付けを落とす。
 その舌で指先を濡らし、身体の奥を優しく掻き混ぜる。

「あ、ん、ん…っはぁ、そんな…っ、や…あっ」
「指だけで、こんなに…?」

 シエルが苦しくないように、丁寧に秘部を押し広げる。

 左脚を持ち上げ、左胸の突起を弄びながら自分自身を挿入する。
 突き上げながら、左の大腿でシエルのそれを圧迫する。
 難しい体位だが、セバスチャンの逞しい性器はしっかりとシエルの奥に届いていた。

「っあ、あ、い、ひっ…く、セバス、チャン…ッ!す、ご…りょうほ、あっ…!」
「相変わらず狭いですね…こんなにすると、裂けてしまいそうだ…ほら」
「ああっ…、か、くど、変えちゃ…っ!そこ、もう、っく…!」
「ココがお好きなのでしょう……っふ…狭いのは変わりませんが…この先端が少し、ご立派になられたようですね?」
「やっ…そ、こ、ぐりぐりしな…で…っ」
「ぐりぐりされて、こんなに熱くなっているくせに…、嗚呼、抜くときと突くときと、どちらも気持ちいいという顔ですね…」
「そ、んな…こと、ああっ…」
「ふ…いつからそんなに、淫乱になられたのです?ほら、また、そんな顔を…」
「あっ、あっ、や、め、そんなに、強…、セバッ…い、いく、いく…っ」

 胸の突起と身体の奥、自分自身を同時に刺激され、シエルは先程より多量の白い液体を放出した。

 自分の中に、どくどくとセバスチャンの精が注がれているのを感じた。

(僕に幸福が訪れるときは、いつも、こうして分かち合えればいい。…)

 セバスチャンは自分自身を抜かないまま、シエルの身体に沈み込んだ。


 鬼の行方は、誰も知らない。


END

image:芥川龍之介『羅生門』

(2012/02/01 UP)
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