ReBirth
□ReBirth -02
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窓の外には、天から逃げてきたかのような白い雪が降り積もっていた。
「ん…」
ベッドの上で、膝に跨がったセバスチャンのスカートを少しずつ捲る。
日頃、美しい瞳やすらりとした手足を快く眺めることはあっても、その臀部が格別そそるなどと思ったことはなかった。しかし今、襞のあるグリーンの短いスカートから覗く、黒いタイツに覆われた膨らみに、痛いくらいに胸が高鳴っている。
セバスチャンの後ろにはちょうど、絡み合う二人を映す大きな姿見があるのだ。このまま指を潜り込ませ、タイツを下げれば、愛でるべきその場所がはしたなくも露になるだろう。
「ふ…、とんだ夜に…なったものですね…」
事の起こりは、一時間半前のこと―…。
「チェスでも、しようか」
12月25日、午後9時。
ヴィンセントは書斎で、ようやく済ませた仕事の山を机の端に押し遣り、傍に控えている執事を見た。
「畏まりました。…手加減は?」
「いいよ、しなくて」
悪魔である彼には到底勝てない。判っていても、ヴィンセントは手加減されるのを嫌った。真剣勝負でなければ、得られるものはない。そう思ってもいたし、要するに、癪、でもあった。
「解りました。…では」
セバスチャンにはまだ、クリスマス・ディナーの後片付けと、新年を迎えるパーティーの準備が残っている。七面鳥に詰め物をするよりも素早く、主のキングを封じてしまわなければならない。
「…チェス納めさ」
「なるほど、今年最後のチェス、というわけですね」
執事がよく磨いておいた白と黒のポーンを、手袋を嵌めた手の中で振り、左右に隠して選ばせる。その手の中が見透かされていることにも、ヴィンセントは頓着しなかった。
「…チェックメイト」
真珠の支える金の時計盤の長針は、まだ幾許も動いていない。ヴィンセントは執事が、手加減をしないばかりかかなり本気を出していたことに気付き、両手を開いてやれやれと溜息を吐いた。
「君はいつだって、私との時間を最小限に切り詰めようとするんだから」
「肉の旨味を閉じ込めたジュレは、一瞬のうちに舌の上で溶けるのでなければ美味しくないでしょう?」
快楽は、一瞬だけ彼の身体の上で火花を散らし、頽廃を残す。それが貴族の楽しみ方であることは、よく知っている。
「だけど…まだ、寝るには早いな」
長い指が葉巻を求め、青藍い瞳が燭台の炎をはねる。
「…片付けが終わったら、また来てくれ」
今度はセバスチャンが、やれやれと溜息を吐く番だった。