ReBirth
□ReBirth -03
2ページ/2ページ
「ん…」
白い首筋に唇が触れ、思考は一気に『この前』の晩に飛ぶ。
一月一日、セバスチャンは「何始めと呼びましょうか」と艶やかな声で囁きながら、シエルの両肩を抱いた。その手はいつもより、力強く感じられた。
「…、よく知らんが、姫…始めとか、殿始めとか、言うんだろう…」
「そんな普通の言葉では、しっくり来ませんね」
それから二人で、恋始め、とか、いろいろ、考えて。
名前を決める前に始めてしまったそれは、いつまでも終わらなかった。
「インタビューの答えは、思い付かないが…」
胸の辺りに潜り込んでいたセバスチャンの肩を掴み、ぐいと離して、その顔を見つめる。
「…秘め始め」
「良いですね」
真顔で答える執事に赤面し、そっぽを向く。
「…と、申しますか、『姫始め』の姫は本来、プリンセスではなく、秘めるという意味だったという説もあるのですよ。イングリッシュでは少々、分かりづらいですが」
「なんだ、そうか」
「まあ、由来は諸説あるようですが…私達には、『秘め』が似合いますね」
嘘の裏には秘密がある。セバスチャンは自分に嘘こそ吐かないものの、その姿で屋敷の者を騙している。
自分達が持っている同じものの淵源は、秘密というものなのだと、シエルは思った。秘密は現実とのずれを作り、絶縁体のような一瞬の躊躇を作る。だから、賑やかな場が楽しめない。セバスチャンとは、感情の通り路が繋がっていた。
セバスチャンはシエルの脚を開かせて、その勃ち上がっているものを指で弄んだ。立派な秘密。昇ってゆく熱に、声が漏れる。
「そ…ん…っ」
「何です…?」
背中を向けさせられ、今度は別の場所があらわになる。
「…ん…っ、は…あ…お前…も、脱げ…」
「それは、早く欲しいということですか?」
「ち…がっ…」
そんな意地悪も、心地よかった。
(このままずっと、お前という動揺に酔っていたい…)
翌朝、アーリー・モーニング・ティーを口にしながら、シエルはインタビューを書き上げていた。
後ろから覗き込んだセバスチャンが、ふ、と口元を歪める。
<何かを始めるとき>
「同感です」
「…見るな」
いつか二人で、心から笑い合える日がくるのかもしれない。そんな未来を始めることも、出来るのかもしれない。
ふとそう思ったが、その想いはしばらく秘密にして、始め方を考えておきたかった。
END
(2012/1/29UP)