ReBirth

□ReBirth -03
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「ん…」

 白い首筋に唇が触れ、思考は一気に『この前』の晩に飛ぶ。
一月一日、セバスチャンは「何始めと呼びましょうか」と艶やかな声で囁きながら、シエルの両肩を抱いた。その手はいつもより、力強く感じられた。

「…、よく知らんが、姫…始めとか、殿始めとか、言うんだろう…」
「そんな普通の言葉では、しっくり来ませんね」

 それから二人で、恋始め、とか、いろいろ、考えて。

 名前を決める前に始めてしまったそれは、いつまでも終わらなかった。



「インタビューの答えは、思い付かないが…」

 胸の辺りに潜り込んでいたセバスチャンの肩を掴み、ぐいと離して、その顔を見つめる。

「…秘め始め」
「良いですね」

 真顔で答える執事に赤面し、そっぽを向く。

「…と、申しますか、『姫始め』の姫は本来、プリンセスではなく、秘めるという意味だったという説もあるのですよ。イングリッシュでは少々、分かりづらいですが」
「なんだ、そうか」
「まあ、由来は諸説あるようですが…私達には、『秘め』が似合いますね」

 嘘の裏には秘密がある。セバスチャンは自分に嘘こそ吐かないものの、その姿で屋敷の者を騙している。

 自分達が持っている同じものの淵源は、秘密というものなのだと、シエルは思った。秘密は現実とのずれを作り、絶縁体のような一瞬の躊躇を作る。だから、賑やかな場が楽しめない。セバスチャンとは、感情の通り路が繋がっていた。

 セバスチャンはシエルの脚を開かせて、その勃ち上がっているものを指で弄んだ。立派な秘密。昇ってゆく熱に、声が漏れる。

「そ…ん…っ」
「何です…?」

 背中を向けさせられ、今度は別の場所があらわになる。

「…ん…っ、は…あ…お前…も、脱げ…」
「それは、早く欲しいということですか?」
「ち…がっ…」

 そんな意地悪も、心地よかった。

(このままずっと、お前という動揺に酔っていたい…)




 翌朝、アーリー・モーニング・ティーを口にしながら、シエルはインタビューを書き上げていた。
 後ろから覗き込んだセバスチャンが、ふ、と口元を歪める。

<何かを始めるとき>

「同感です」
「…見るな」

 いつか二人で、心から笑い合える日がくるのかもしれない。そんな未来を始めることも、出来るのかもしれない。

 ふとそう思ったが、その想いはしばらく秘密にして、始め方を考えておきたかった。


END

(2012/1/29UP)




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