BLUE in the nest

□BLUE in the nest -02
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† † †

「…それは所詮生き残った者のエゴに他ならないし」

 シエルは小さく息を吸って、言葉を探す。逡巡した後渇いた唇を開く。

「ようは、気晴らしだろう?」

 セバスチャンは少し離れたところで、主人の選んだ言葉を聞いた。周囲に悟られないように、そっと口元を歪める。笑っているのか、憤っているのか、それはたまたま表情の変化に気付く者がいたとしてもわからなかっただろう。

 セバスチャンは再びポーカーフェイスをつくり、無機質にペンを走らせた。

 シエルはマダム相手に勝ち続けている。

 それは恐らく、『気晴らし』にも『息抜き』にもならないだろう。

 自分には聞こえている。言葉の端から漏れる暗い啜り泣きが。泣き疲れてかすれた声が。
 シエルの耳から離れない阿鼻叫喚は、そのまま魂を共鳴させセバスチャンに届いている。

 白と黒の境界が明確な一本のラインを浮かび上がらせるように、シエルの強さはそのまま彼の苦しみを描き出している。

(位置を定められたチェスの駒)

 セバスチャンは思った。

(確かに、貴方の足元に広がるのは一色で、揺らぐことはないのでしょう)

 だがそれは息をつく余裕もないほど、狭く閉じた場所だ。…



† † †
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