BLUE in the nest
□BLUE in the nest -12
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ゲーム好きの少年にとって、自分でそれを作り出すことは、プレイすること以上に大きな喜びなのかもしれない。
「…スペードとクローバーで、ダイヤを黒にチェンジ…」
シエルは一人、書斎で自社の新製品を試していた。トランプとオセロの要素を組み合わせたようなそれは、簡単だが、なかなか良い出来だった。菱形の駒をつまみ、満足そうに微笑む。
外は雨が降っており、窓ガラスに幾筋もの水跡を残していた。こんな天気の日は持病が悪化するといって、家庭教師のマダム・ロドキンはたいていレッスンを休みにする。幸運な空き時間を使って、シエルは心ゆくまでゲームを楽しむつもりだった。
その男が、入って来るまでは。…
「…呼んだ覚えはないぞ」
「そーねェ、まぁ、アタシたちって、呼ばれて来るようなモノでもないし?」
シエルが睨みつけているのは、突然窓から侵入してきた招かれざる客―赤い髪に赤い服の死神グレル・サトクリフである。
雨に濡れた髪を振りながら、シエルのほうへ近付くと、デスクの上にひらりと腰を下ろす。
「…では聞くが、死神は生きている人間の邪魔をするものなのか、ええ?」
「ンフッ、相変わらず可愛くないガキねー。アンジェリーナは派手好きで華やかだったけど、アンタの母親はアンタみたいにとんでもなく無愛想だったのかしら?」
「なっ…、お前!」
思わず立ち上がり、銃を構える。
が、それよりもはやくグレルに武器を突き立てた者がいた。
「久しぶりですね、悪趣味なグレル・サトクリフ」
「セバスチャン…!いつの間に…」
「あら、セ・バ・スちゃーん…うぐっ」
振り向いたグレルの頬に、ひやりと触れるナイフの先端。
「相変わらずいい度胸ですね。一回ぐらいその胸に、風穴をあけて差し上げましょうか?」
「やだぁ、セバスちゃんたら顔だの胸だの大事なところばかりを狙うんだから…ンブッ」
次の瞬間、グレルは長い脚で蹴り飛ばされていた。一体どれほどの衝撃だったのか、部屋の隅まで飛ばされた彼の顔は痛々しく腫れ上がっている。
「ひ…ひどいわセバスちゃん!また眼鏡がゆがんじゃったじゃない…」
「ひどいものですか。私が綺麗にした絨毯を汚しながら入って来て、当家の主人に手を出そうとするなど…百回ぐらい死んで頂かないと割に合いません」
グレルは立ち上がり、必死に体勢を立て直す。
(あいつ…)
セバスチャンの口調からは、絨毯が大事なのかシエルが大事なのか、いまいち判断がつかなかった。
† † †