BLUE in the nest

□BLUE in the nest -22
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 駅に着くまで、シエルは完全に眠っていた。御者台に居るフィニ達の浮かれ声や、車輪が土の塊を踏んでガタゴト揺れる音に、セバスチャンは時折表情を険しくしたが、主人はついに目を覚まさなかった。うす蒼い瞼は、白砂の寝床でさざ波に洗われる貝のように静かに閉じられていた。

 昨夜、シンデレラ・タイムに忍んで来た執事のせいで、少々寝不足なのである。馬車に揺られながら、シエルは微かに夢を見ていた。真っ白なお城で、窓の外を眺めている。針葉樹の森を抜けてガラスの馬車がやって来る。乗っているのはセバスチャン一人で、自分を見上げ秋の風のような微笑みを投げかける。

 …おこがましいな。一人馬車で登場するなんて…。

 ええ、本当ですね…。





「坊ちゃん、もう少し楽しそうなお金をしたら如何です」

 セバスチャンはそう言うと、温かい紅茶の注がれたカップを恭しく差し出した。

「水分摂取を我慢される必要はございませ」
「子供扱いするな」
「トランシー家が気になりますか」
「…」

 物憂げに、身代金を抱える貴族に目を遣ったあと、自分の大腿を撫でる白い手を見下ろした。人差し指と親指で手袋をはめた小指をつまみ、持ち上げる。

「お前はいつも、焦らす」

 持ち上げた手を下ろした場所は、少し盛り上がったズボンの上。

 真夏に思いがけず出会った、深い静けさを抱く森のような。
 その冷たい空気を浮かべた碧い瞳は、朝露を集めて出来た生まれたばかりの湖のようで、あどけなさと鋭さの共存が不思議な彩を奏でていた。

「おや、」

 珍しく積極的ですね、と言いかけて、金具に手をかけながらその言葉を飲み込む。折角シエルのほうがその気になっているのだから、それを削ぐ理由はない。

「脚を…開いて」

 絨毯に吸い込まれる音のように、低く穏やかな声。セバスチャンが脱いだ燕尾服に包まれ、赤面しながら、従う。舌が濡れそぼった先端に触れのを感じ、小さな喘ぎを漏らした。




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