BLUE in the nest

□BLUE in the nest -32
2ページ/3ページ


「えへ、寒いから離れたくないなぁ〜なんて」

 …馬鹿?

「わわっ」

 ウィリアムは怒った顔で、ロナルドを振り落とそうとした。が、ロナルドの腕は更に力強くウィリアムにしがみつく。

「危ないですよ、安全運転!」
「降りなさい!はやく!…うわっ」

 元々、自分とあまり体格の変わらない者を背負っていたので、バランスが悪かったのである。ウィリアムはロナルドに引っ張られるようにベッドに倒れ込んだ。
 倒れてもなお、ロナルドはウィリアムの背中から動こうとしない。

「…こんなに…」
「…?」
「こんなにバカだったとは…早く離れなさい!!」
「い・や・で・す・よ」
「…!」

 聞いたこともないトーンの声に、身体が強張る。が、なんとか自分を奮い立たせて背中の温もりを追い払おうとした。
 振り返ったウィリアムの目に映ったのは、昼間やんちゃな明るさを浮かべていたはずの黄緑の瞳。
 肌が小麦色なら、もっと幼く見えたかもしれない。白い肌に添えられた黄緑に見つめられ、強い酒をあおったときのように頭がくらくらとした。この瞳は、何だろう。

「知ってます?アランはエリックのことが好きなんですよ」
「…」
「っていうかあいつら、相思相愛なんですよ」
「何を…」
「この間、あのエリック先輩が珍しく真面目な顔して、ひそひそ言ってきたんですよ。俺、アランと…って」
「…っ、そ、そうで…」
「あのエリック先輩がですよ!合コンでオレよりがっつくあの人が!恋、してるんです〜…みたいな!コンフェッションですよ!それでぇ〜……オレの初恋も、そろそろ叶えたいなって」

 ロナルドはウィリアムの眼鏡を外し、緊張しきっているその瞳に微笑みかけた。

「初…恋…、まさかあの花は…ウッ」

 細い肩を押さえつけられる。ぼんやりと、ベッドに刻まれたナンバーが見えた。
 協会の、こんな場所で恋などと。しかも後輩を相手に。

「そう、先輩を狩りに行きますよっていう、合図です」
「ロナ…」
「さっき、眼鏡直すフリして、鼻に触れたでしょう。…オレの話聞いて、興奮してるってことですよね」
「な…っ」
「ああ、それなのにこんな体勢じゃ、苦しいですか?今、楽にしてあげます。…」

 そう言いながら、ハンカチを使ってウィリアムに猿轡をかませた。
 ネクタイを外し、馬乗りになって後ろからシャツのボタンを外してゆく。

「ンン゙ッ」
「ああ、足ですか?すみません、もう治ったみたいです。たいしたこと、なかったのかも」

 ハメられた、らしい。
 そう気付いたときには、声も出せず、腕はネクタイで縛られていた。脚はずっと男一人を背負い歩いて来たために疲労しきっていた。

 ロナルドは背中に口づけながら、胸板を優しく撫でた。

「ん…先輩の乳首、女の子よりいい感じ…」
「……ッ!!」
「‘スリッパリー・ニップル’ですね。ほら、SLIPPERY WHEN WET<雨の日はご注意>」

 指先を舐め、上から下へ何度も滑らせて突起を弾く。もがくウィリアムに煽られるように、動きが激しくなってゆく。

「はぁっ…先輩…」

 筋肉しかないはずの胸を乱暴に掴んで揉みしだく。

「んん…、ン…ッ…!!」
「あっれ、先輩、…もしかして乳首だけでイッちゃった系ですか」
「〜!!!」
「可愛いんですね…先輩」
 茶化すような声から一転して、甘い囁きが聞こえる。

「恋なんかしたこと、ないんでしょう…?オレと一緒に、始めましょう」
「ン…ンン゙ッ」

 ロナルドはウィリアムの下着をズボンごと下ろすと、仰向けにして顔を埋めた。精液に濡れたそこは、一度目の射精前より更に大きさを増し、固く張りつめていた。

「ンン゙ッ〜!…!!」
「…っはぁ…結構、デカいじゃないスか…あとでオレのもしゃぶって下さいね」
「…ッ!!」

 声が出せない分、快感は逃げ道を失って、知らず知らずのうちに腰をうねらせていた。白い大腿はその度に押さえつけられ、最後までロナルドが主導権を握っていた。






「おはようございます!」
「おはよう、アラン・ハンフリーズ」
「っはよーございまーす」
「おはよう、…」

 ウィリアムはいつもと変わらず、淡々と挨拶を返した。が、アランは部屋の中を覗いて、おや、という顔をした。

「どうした?アラン」
「…、ううん!何だったかなぁ、花言葉…」

 窓際に移された花瓶には、ピンクと紫のチューリップが活けられていた。

「ねえエリック、恋人に花を贈る男性って、素敵だと思わない?」
「んあ?そうだなぁ、俺は花よりジンのほうがいいな」
「もー…」

 遠ざかる二人の声を聞きながら、ウィリアムはそっと眼鏡を直した。

「全く…」



END



後書きがあります
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ