BLUE in the nest

□BLUE in the nest -35
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 ローズ・ドゥ・モーの小花が散り、雨で黒く濡れた土にピンク色の花溜まりを作っていた。セバスチャンは各部屋に飾る花を調達するために、小糠雨の中をゆっくりと歩いていた。頭上からはセイヨウカリンの厚い葉が、時計のように規則正しく集めた水を滴らせていた。この木もまた春に花を咲かせ終え、恵みの雨の中で結実のときを待っていた。
 すぐそばにガーデニアの木が並んでいた。濃緑の葉の上に、八重に並んだ先の尖った白い花弁がくっきりと浮かび上がり、雨を受けて一層清楚に輝いていた。
 セイヨウカリンの実は熟すと開くが、ガーデニアの実は熟しても割れない。シェイクスピアは、樹上で腐り末端を開くセイヨウカリンの実を娼婦になぞらえたが、ガーデニアはどうであろうか?蕩けるような豊かな香り、薔薇よりも強い白、とりつくしまのないような実。…

 ふと視線を感じ、手で雨を避けながら見上げると、書斎の大きな窓から小さな主人がこちらを見ていた。あそこにも花が咲いている、そう考えてセバスチャンは少し笑った。

 シエルは呼びつけるでもなく、椅子の向きを変えて仕事に戻った。

(見つめればすぐ、見つめ返される)

 それが大事だった。その瞳が、そのまま近付いてくるか、どうか。それは彼しか知らない。

 雨は次第に弱まり、木々の葉は一度大きな雫を滴らせたのちひっそりとうなだれた。少し数の減ったガーデニアの花は、光を弾く水滴をまつわらせ、逞しい黒蝶を招こうと情熱的な香りを広がらせた。





 広い主寝室で、シエルはいつも通りに白い寝間着を着せられていた。寝室は眠りの神がけしの花を振り撒いたかのように、穏やかに就寝のときを迎えていた。が、ベッドに横たわる者がいつも眠るつもりだとは限らない。

 シエルは目を閉じる前に、見慣れた、形のよい目を覆っている黒い睫毛を眺めた。セバスチャンは艶っぽい視線で主人を見返すと、柔らかい頬をそっと撫でた。そのままシエルの被っている布団に手を触れる。が、特に何をするわけでもなく、恭しく一礼すると燭台を持ちドアのほうへ向かった。

「なんだ、…違うんだな」

 一瞬の間があり、セバスチャンが振り返った。だが、シエルは既に目を閉じ、枕に沈んでいた。

「そんな瞳をするから。…おやすみ」

 ドアの開く音は、なかなか聞こえてこなかった。代わりに、ナイトテーブルに何かが置かれる音がした。





 流暢に朝食のメニューをそらんじながら、ブラウスのリボンタイを結ぶ。
 「ああ」という短い返事はいつもより、少し不機嫌で冷たい。

「…ふ」
「何だ」

 セバスチャンはドアを開けながら、頭を振って答えた。

「いえ…、火傷させられた自分を嘲笑ったのですよ」
「‘With supping cold plum porridge’(冷めたプラムポリッジを啜って)?」
「月から引きずり落とされましてね」
「だから、…誘ったつもりじゃ、ない…」

 誘ったつもりではない、シエルがそう思っているのが、セバスチャンには驚きだった。


『なんだ…』


 そう言われて、寂しそうな声で『おやすみ』と聞かされてしまっては、逆に寝室に留まりたくなるというものである。





 ナイトテーブルに燭台を置き、一つだけ火を残す。先をくわえて手袋を外し、白い指先でじかに頬に触れると、シエルが目を開いた。

「んっ…」

 文句を言いたげな唇をふさぎ、寝間着に手を入れる。小さな布に覆われたそこは、少しの愛撫で固くなり始めていた。零れた液体が指を濡らす。

「はぁっ…」

 セバスチャンは手を上下させ、下の膨らみを刺激しながら優しく擦り上げた。
「もう、下着の役を果たしていませんね…」
「…脱がす…な…っ」
「すぐに、新しいものをお持ちしますよ…その前に、綺麗に致しましょう…」

 寝間着をめくり、あらわになった小さな性器を丹念に舐める。口の中で圧迫され、シエルは思わず細い腰を浮かせた。

「あっ…はぁ…ん…っ」
「坊ちゃん、言ってご覧なさい。『執事にしゃぶられて気持ちいいです』と」
「ばっ…、そんな…こと…っ!」




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