BLUE in the nest

□BLUE in the nest -35
2ページ/2ページ


「ご自分から誘っておいて、今更恥ずかしがるのですか?」
「そんな…やっ、激し…すぎる…っ、あああっ」
「んっ…これがしたかったのでしょう?さあ…言って…」

 シエルの額には汗が滲み、白い肌は血を透かしてサーモンピンクに煌めいていた。

「はぁっ………し…しゃぶられて、き、きもちい…ああっ、うっ…」

 シエルが真っ赤になって迸らせたものを、しばらく口の中で転がす。唇から零れたそれを手の甲で拭い、舌で舐めとる。満足げに微笑むと、シエルは布団を掴んで身体を隠し、憤然とセバスチャンを見上げた。

「坊ちゃん、次は、…」
「あ、あんなこと言わせて、か、簡単に出来ると思うなっ!」

 か弱い主人の徹底抗戦、ということのようである。上気した頬は幼さを引き立たせ、獣に襲われ逃げ惑う小兎を連想させた。

「欲しければ奪ってみろ、ということでしょうか?」

 セバスチャンは愉しげに笑うと、主人の手から羽根布団をむしり取った。たまには、そんな趣向もいいかもしれない。紅い瞳を輝かせて、じりじりと主人をベッドの端に追い詰める。

「うっ…」

 シエルはベッドから転がり出、壁際へ逃げた。が、すぐに黒い腕に捕まってしまった。

「逃がしませんよ」

 左手をシエルのお腹に回して抱え込んだまま、右手で自分のベルトを外す。

「…っ」
「ひどいことは致しません…ご存知でしょう?」

 左手を胸に這わせ、勃ち上がったそれを見つけ出す。強くつまむと小さな肩が震えるのがわかった。

「それとも、…ひどいやり方をお望みですか…?」
「あ…ん、耳…やめ…っ、あ…っ」

 寝間着を破いて、やや乱暴に床に寝かせる。貴族らしい、大胆で派手な模様の絨毯に横たわる真っ白な少年の身体は、否が応にも征服欲を燃え上がらせる。
 もどかしい気持ちで指を濡らし、性急に押し広げる。シエルはもう抗わず、指が抜かれるたびに反応してしまいそうになりながら必死で耐えていた。
 解したそこに自分をあてがう。あたたかく濡れた小さな闇に引き込まれるのを感じた。細い首筋に唇をあて、印をつける。身体を密着させ、根元まで深く沈める。

「ひ…あっ」

 シエルの中で、太いものが緩やかに動いた。前立腺ばかりを突くと、シエルの漏らす吐息が次第に尾を引き、艶めいた喘ぎ声に変わった。

「…っ、もう…」
「もう…?イった後も…突き上げられることになりますよ」
「…そ…れは…っ」
「ふ…今の締め付けは、それがお好きだというお返事ですね」
「ちっ…がっ…、あっ…、はぁ…ん、もう…出…っ」

 宣告通り、シエルが自分を解放させてもセバスチャンは勢いを失わなかった。姿勢を変え、シエルの片足を上げさせて最奥を突き上げる。絶頂に達したばかりの柔らかい身体を快感が貫き、シエルはしばらく気を失った。





 水の音で目を覚ますと、毛布にくるまれ、浴室の入口に置かれた椅子に寝かされていた。

 湯気の向こうにアームガーターで袖を留めたセバスチャンの姿が見える。抱え上げられ、二、三度瞬きをした。バスには八重咲きのガーデニアが浮かんでいた。目を閉じると、疲れた身体を濃厚な花の香りが包んだ。

 ニヤけた顔で見られているような気がして、目を開けられない。だが、黙っていても構わずに、セバスチャンはてきぱきとシエルの身体を洗い上げていく。

「…激しかった」

 よかった、と言うのが癪で、そんな間の抜けた呟きを漏らす自分が悔しい。

「…、誘い方が、お上手でした」
「そんなこと、してない…」

 恥ずかしさから抵抗したのであって、それが燃え上がらせることになるとは、思っていなかったのである。

 だが、たまにはそんな行動に出るのも悪くないようだ。

 シエルは立ち上がって、セバスチャンを見つめた。

(ガーデニア…『私は幸せ者』…)

 その瞳が、そのまま近付いてくるかどうか。それは、彼しか知らない。


END


(3月30日完成)
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ