11/28の日記
22:48
ふたセバ 6※R18シーン含
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熱いものがあてがわれ、再び下腹部を握られる。
「… … …」
「セバっ…何て、言って…」
陰嚢を手で包み込まれ、シエルは腰をよじって逃げようとした。が、左右に身体を動かす度に、セバスチャンのそれが深く食い込んだ。
「…、…」
「はぁ…っ、やだっ…、もう、イ、く…!」
(やはり、『私』でなければ…)
らしくもなく口元を緩ませて、主人の寝室を後にする。
が、階下からミカエリスが同じようにニヤけた顔で自分を見上げているのに気付くと、冷たい表情を作って、その横を通りすぎようとした。
「貴方の提案」
すれ違い様、ミカエリスが呟く。
「お世話は一日交代、どちらかが坊ちゃんとベッドを共にするときには、気付かれないよう室内を監督してよい…早速、その通りにさせていただきました」
こうあからさまに覗き見を宣言されるのは、快いものではない。自分が、相手を牽制するために提案したことであっても。だが、ミカエリスのしていないことをしている、という事実を思い出し、皮肉の一つも言ってやろうと、セバスチャンは口を開きかけた。
その時、聞き覚えのある馬蹄の音が外から響き、二人の対峙を中断させた。
「…貴方は、どこかに隠れていて下さい」
窓の外を覗く。それが来るときは、あの軽い癖に重要な紙切れの来るときである。
―人間の世界の、つまらない権力。
(いえ…、いけませんね)
自分の中の悪魔らしさを抑え、執事としての仮面をつける。
「‘夏を控えたロンドン市内にて、墓に悪戯をする者が私を悩ませています…’」
「副葬品の盗掘でしょうか?」
食後の紅茶をカップに注ぎ、空になった食器をワゴンに下げる。残さず食べたのは自分が体力を使わせたからだろうかと、手紙を読むシエルを見下ろして満足げに微笑する。
「目的は死体そのものかもしれないな。新鮮な…解剖用の死体は金になる。暑くなると仕事にならないから、今のうちに稼いでおきたいのに違いない。そのために殺しを働く者さえ、いるくらいだ」
「随分、医学の目的とは矛盾した話ですねぇ」
「死ぬのを待っていられない、短気なんだろうな」
お前と違って。
その言葉を紅茶と共に飲み込み、シエルは立ち上がった。
「ロンドンに行くぞ。ミカエリスは人目につかないように、注意して連れて行け」
「置いていかれても、よろしいのでは?」
「執事が二人いれば、仕事も早く片付くだろう?」
不服そうなセバスチャンを見、シエルは意地悪く微笑んだ。
部下を競い合わせればより大きな成果が得られる、経営の基本である。
それに、昨日拒絶したティータイムの眼差しが、気になってもいた。
ブロンプトン墓地は1840年に造られて以来多くの富裕層の眠りを受け入れてきた、サウス・ケンジントン近くの静かな墓地である。
カタコンベの入口は昼間でもひんやりとした空気が漂っていて、シエルは観察するふりをしながら急ぎ足でその前を通り過ぎた。石で出来た彫像の間をリスや野ウサギが駆け回り、青々と繁った木々の緑が十字架の上に濃い影を落としていた。
「墓石が倒されているものも、結構あるな…この広い墓地でどうやって手掛かりを見つけるんだ。やはり待ち伏せか…」
ふと、マスクで顔を半分隠したミカエリスが、黒いものを拾い上げた。
「坊ちゃん、これを」
セバスチャンとシエルがミカエリスの手元を覗き込む。ミカエリスの白い手袋の指先が、黒く煤けていた。
「炭…木炭のようですね」
「木炭?焚火でもしたのか?こんなところで」
怪訝な顔で、その横の墓を眺める。よく見ると、周囲にはまだ新しい人の足跡や墓石をずらしたような形跡が残されていた。
「亡くなったのは6年も前か…死体泥棒では、なさそうだ」
一度暴いた墓に再び戻ることは、ないだろう。
「やはり、待ち伏せしかないな」
散らばっている木炭の欠片を見遣りながら、シエルはため息を吐いた。
0時を過ぎると、シエルの世話をする権利はミカエリスに渡される。二人と一人にわかれ、墓地の南北で息を潜めて待つ。
「お寒くありませんか?」
ミカエリスの手が、シエルの肩を抱く。僅かに身体を固くしながら、シエルはその手に体重を預けた。
セバスチャンとミカエリスは、恐らくほとんど‘同一のもの’であるのに違いなかった。だが、セバスチャンには慣れた恋人の安心と信頼を、ミカエリスにはこれから始まるかもしれないことへの期待と甘い予感を、それぞれ感じていた。
「何に使ったんだろうな…」
ポケットから、昼間拾った木炭を取り出す。
「バーベキューでも、したのかもしれませんね。肉なら沢山、ありそうですからね」
「…気色の悪いことを言うな」
「ですが、その木炭には、臭…」
突然、ミカエリスがマスクをつけ直し、シエルの前に立ちはだかった。
<続きます…!>
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