01/31の日記
23:41
ふたセバ 7
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「奇遇だねぇ、シエル!」
「お前は…」
月の光の差さない墓地で、アロイスの金髪と紫のコートが僅かな風に揺れていた。
右側にはクロード、左には―…髪は青いが、クロードと瓜二つの執事が立っている。
その姿を見て、シエルは理解した。
恐らく、自分の執事と同じことが、アロイスの執事にも起きたのだ。
「このような場所で、隠れんぼなどする彼らでもないはず」
「わかってるよ、クロード…ねぇシエル、一体何をしにここへ来たの?」
シエルは口を噤んだ。
墓を荒らしているのが、アロイス達でないという保証はない。
「セバスチャン…!」
そう叫ぶや否や、墓石の影からセバスチャンが現れ、クロードを後ろ手に捕らえる。
「…!貴殿も、二人…」
「鈍いですよ。どう見てもあれは私ではないでしょう」
いや、大体同じじゃないのか。
誰もがそう思う中、Cがアロイスの前に立ち塞がり、金の食器を取り出して身構えた。
「ふ…まるで将棋ですね。飛車があと一手で取られてしまうのをお忘れなく」
「…」
「あはっ…いいよ、C。俺は戦うつもりはない」
アロイスは笑いながら、シエルのほうへ近付いた。
「この墓地で何か楽しいことが始まるなら、見学させてくれよ、シエル」
「…わかった」
核心は話さず、とにかく隠れて見ていろ、と告げる。何か起きるかもしれないし、何も起きないかもしれないのだ。
「信用したわけじゃない。クロードの両手は縛らせてもらう」
「いいよ。変わったプレイって、あいつ好きなんだ。ねぇ?」
アロイスは嘲笑うような目で、セバスチャンに縛られているクロードを見遣った。
クロードとCの脳裏に昨夜の情景が蘇る。二人は顔を見合わせた。
夜風が木々をざわめかせ、揺れないはずの墓石の影も揺らすようだった。
それから約30分が経過し、ミカエリスが懐中時計を出して時刻を確かめたときのことである。
何語か判然としない、不思議な歌が近付いて来、シエルとセバスチャンは顔を見合わせた。陽気にも、哀愁を漂わせているようにも聞こえる。
歌声は、シエル達の隠れている場所より2m程北の墓石の前で止まった。
黒い人影に、墓石の十字架の影が落ちていた。
―四人ですね。
―一人は、女か。
人影の二つは、墓の前で手を合わせているようだった。
しばらくすると、二人の男が土を掘り起こし始めた。女はまだ手を合わせていた。
男の一人は背負っていた箱のようなものを下ろし、中の道具を並べ始めた。
鍋。
篩。
竹で作った小さな板。
目の粗い紙。
木炭。
鍋に炭を入れ、マッチを擦って火を入れる。
―何?死体でバーベキューでもするの?
―まさか…。
やがて土の下から、古びた棺が現れる。
彼らが女王を悩ませる『墓荒らし』であることは、もう疑いようがなかった。
<続きます…!>
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