Tennis
□望み…
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‐ピピッ‐
不二は脇に挟んだ体温計を取り出し、表示を見ると“38.9”の文字。
『あぁ…完璧に風邪…』
その数字を見て、もっと具合が悪くなったような気がして、そのままソファーに倒れ込んだ。
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朝、目が覚めて起き上がろうとすると体の節々が痛くて動けなかった。
やっとの思いで階下に降り、
熱を測るとこの有り様。
全国大会前の大事なときに体調管理もできないとは…
かと言って練習を休むわけにもいかず、
出かける仕度をしようとふらふらしながら立ち上がると
姉の由美子が心配そうに声をかけてきた。
「周助、まさか今からそんな状態で部活に行こうなんて思ってないわよね?」
「行くけど」
それを聞いた由美子は驚き、そして呆れたように、
「何を言ってるの。
無理に決まってるでしょ。
熱があるなら家で大人しくしてなさい」
「でも…」
「今練習を頑張りすぎて大会に出られなくなったらどうするの?
そうなったら今まで頑張ってきたのが水の泡よ」
その言葉に不二は押し黙ってしまう。
確かに姉の言うとおりである。
無理をして大会当日のコンディションが最悪になるより、
今日休んで大会に備える方が絶対にいい。
「姉さんの言うとおりだよ。
今日の部活は休むことにする。」
それを聞いた由美子は満足気に微笑み、
「そうよ。その方が絶対にいいわ。
ゆっくり寝て、早く治してなさいね」
「うん。ありがとう。
じゃあもう寝るね」
不二はそう言って重い体を引きずるように自室に戻り、ベッドに横になった。