迷探偵シンパチ

□第三話
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「窓際どうぞ」
「ありがと」

僕たちは運転席の後ろの席に座った。
そして、通路を挟んで、左隣が銀八先生。

「特等席だね」
「特等…?」
「前がよく見えるから」

餡子さんは特等席だって言うけど、僕は先生の隣だからあまり良い気分はしない。

「チッ。俺の隣、ダメガネかよ」
「僕で悪かったですね!」

僕は餡子さんの隣でもあるから良かったですけどね!いいだろう、と自慢するほどでもないけどさ。


「お前おやつ持ってきてなさそーだもんなぁ」
「食べたいなら自分が持って来いよ!」

後ろの方では、お菓子を奪い合っているらしく、ガヤガヤと騒がしい。

「やっぱり、おやつといえば酢昆布ネ!」
「何を言っている!おやつといえば、んまい棒だろう!」
「バナナはおやつに含まれますよね?先生」
「含まれませんよね、先生。だってゴリラ臭がして迷惑ですもの」
「せんせー、マヨネーズはおやつに含まれませんよねぇ?」
「バッ!マヨネーズは立派なおやつだろーが!」
「土方さん、前にマヨネーズは主食だって言ってなかったっけ?」
「主食のマヨネーズは主食なんだよ!今日持って来たのはおやつのマヨネーズだ」
「おやつは300円までだぞ。それ以上持って来てたら俺が食うからな」
「先生、私300円以上お菓子を持ってきてしまったので、どうぞ私を食べて下さい」
「お前は外で頭を冷やして来い」
「そうですね、そうするわ。私、先生への愛で溶けてしまいそうだもの」


さっちゃんは窓から身を乗り出して──
って、止めなくていいの?!?

「先生、全然熱が冷めないのですが!さっきよりも熱いくらいなのですが!」

バスの外から声がしているので、どうやら大丈夫みたいだ。
目的地まで走って行くなんて、ガッツあるなー。
僕は真似したくないよ。

「新八君、お菓子あげる」

餡子さんは学生鞄の中から棒状のチョコレート菓子を出してきた。

「有難うございます」
「先生も、どうぞ」
「サンキュー。やっぱり茄子は気が利くなぁ。ちょうど、甘いもんが食べたかったんだよ」
「あんたは結局、菓子が食べたかっただけかよ!」
「糖分摂らねーとイライラすんだよ」
「それにしても、スキー実習、急に決まりましたね」
「設定の予定が詰まってるから早く消費しねーとな」

いや、設定とか言ったら駄目でしょーが!
そんな事情は僕らには関係ないし!
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