主食
□銀月
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今日の仕事は長距離だった。
いつもならば遅くてもまだ太陽が顔を出しているぐらいなのだが、
今はとうに太陽は眠りにつき、
月と星達の遊び場の様な空だった。
それはとても綺麗な遊戯場で、いつにも増して透き通る様な銀の月が周りの星達を見守る様な世界が広がっていた。
常より銀が強く綺麗に見えるのは、
家で自分の帰りを待っているであろう最愛の人を考えていたせいか。
今夜の月とは対照的な金を揺らし微笑を零してアクセルをまた強くした。
(早くあの銀に会いたい…)
北の大空洞―
2年前、あの場所で愛する人の皮を被った災厄との戦いを終わらせた。
星に、暮らしに大きな爪痕を残した戦いであったが、
星も人々も精一杯生きていた。
一緒に闘った仲間達も自分の帰る場所に帰り、
離れ離れになったがその地で旅の時の様に懸命に生きていた。
だが…
ただ一人、クラウドは違った。
最愛の人を三度もこの手で屠った。
精神は別人だったかも知れないが、
表面は確かに彼だった。
いくら別人だと思っても、
あのまなざし、刀を振る様、透き通る様な銀糸…
全てあの時の彼だった―…
どんなに星を救ったと称えられようが
どんなに共に旅した仲間に再会しようが
最愛の人と姿と何も変わらないモノを屠った自身を憎まずにはいられず、
ただ毎日死んだ様に生きるだけであった。