主食
□待ち合わせ
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「明日仕事が終わったら外で待ち合わせしないか?」
セフィロス特製の煮込みハンバーグを頬張っていたクラウドはその言葉を聞いて、久し振りのデート誘いに嬉しい反面戸惑った。
「…急になんだよ。」
メテオ、ジェノバ、新羅―…
そんな言葉が子供の授業で習う歴史でしか聞かなくなった今、
何の因果かまた復活を遂げたセフィロスと、体内に埋め込まれたジェノバ細胞の影響で老いの無くなった体のクラウドは都会でも田舎でもない街に住み着いていた。
二人の事を知る人が誰もいない世界で配達を生業として豊かとは言えないが落ち着いた生活を楽しんでいた。
共働きなので家事は一週間交代。
セフィロスが食事当番ならば、クラウドは掃除当番。
買い出しは二人で仲良く近くのスーパーで。
彼等が本来生きていた時代ならば考えられない程、平和で幸せな生活を築いていた。
それはもう何年も、何百年も…
「…嫌か?」
残念そうに形の良い眉を下げ、寂しそうな瞳で見つめられると昔ならば焦って理由も聞かず快諾していたと思うが、
何世紀も隣りで過ごしていれば嫌でも耐性もできるものだ。
ただ出来れば愛しい人にそんな顔はさせたくないというのは、絶対本人は言わないのだが。
「…別に。ただあんたがそんな事いうなんて珍しいと思って。」
街に出るのが苦手なあんたが。
「それに明日から俺が食事当番だし…
外食するなら楽だけどさ。」
「ならば明日は外食をすればいいのだな。」
理由も告げず半ば強制的に明日のデートは決定事項となった。
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