破滅の子守唄
□第七章
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「ぐっ…!!!」
急所は避けたが、腹を大きく裂かれてサイアンは呻いた。
「(深い…。まずいな、このままだと出血多量で…。
いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。
…レアネス、なんとか乗りきってくれ!)」
痛みで意識が朦朧としながら、サイアンはそう願った。
「さあて…。
次はこっちか」
「待てよ、デントロ。次はおれの番だ」
「いや、オレだ」
いかにも頭が悪そうな三人がもめ始めた。
その隙に、レアネスは人を呼ぼうと窓に手を掛けた…が
「おっと!
無駄な抵抗はするなよ、クソ餓鬼」
気づかれてしまった。
「…ちっ」
小さく舌打ちをする。
早くここから脱出しないと、サイアンが危ない。
今まで嫌というほど見てきた、死ぬ間際の顔色になってきているのだ。
「‥‥‥‥」
ブツブツとレアネスは何かを唱え始めた。
「ん?」
デントロが下を向いた。
「わ…我、汝を求めん…。
我の名、レアネスの下に姿を―」
レアネスの呪文がふと、小さくなる。
腹の傷が痛む。
脳天にまで響く、鋭い痛みに、顔をしかめながら、レアネスはまた呪文を唱えた。