ドラゴンクエストV

□滅びの村(全21ページ)
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船は快調に走る。

魔物は襲って来ない。

きっと、賢者二人のせいね。


「エリシア。あれはこうだったわ」

「なるほど。じゃあ、これがああなるから、こうなるんだね」

「そうそう。あ、それはこうすれば…ほら」

「さすがだね…。助かったよ」


私は、そんなやり取りをする賢者二人を目の端に、見張り台に登った。

海は穏やかだ。

遠くにネクロゴンド山脈が見える。

到着まで、もう少しかかりそう。


「コーマ!」


エリシアが見張り台に登って来た。


「え…エリシア!」


エリシアの賢者の衣装は、ラディルの衣装とは違って露出が多く…。

裾も短い。

豊かな胸が今にも溢れそうで…。

それと。


「ぱんつ見えちゃうからぁ!」

「大丈夫だよ!見たらザキるって脅したからね!」


ザキる…って…。

ラディルが大人しく従うかなぁ。

エリシアは私の隣に立って髪を掻き上げた。


「アンタの彼氏、いい奴だよね」

「仲いいよね。同じ賢者同士だし、いいことね」

「何?ヤキモチ?や〜ん…ホント、アンタ可愛い!」

「ヤキモチじゃないよ…。安心したの」

「安心?何の」

「バラモスをギッタギタに出来るん
だって安心。賢者って凄いよね」

「任せといて。まっだまだ習得する呪文があるしね」

「私も負けてられないな」


私は、エリシアの腕を組んだ。


「…あの…ね…」

「どうしたの?」

「…わ…笑わないでね…。その…」


私は、昨夜のことを報告しておいた。


「はあはあ!へぇ…ふぅん…そっかそっか!」

「か…からかわないでね…」

「…良かったねぇ」


エリシアは微笑んで私の頬をつついてきた。


「コーマは勇者の前に女の子なんだから、女の子の幸せを実感しなきゃ。アタシはそう思って、心配してたんだ」

「心配?」

「ああ。バラモスを倒すだけの人生なんて…しんどいだけじゃん。アンタもラディルも…モロゾフさんだって、いつ死ぬか分からないんだからさ」

「モロゾフさんも同じようなことを言ってたな…」

「人生の先輩は皆言うさ。いつ死ぬか分からない。そういう人達は必ず言うもんさね。自分の遺伝子を残したいって」

「い…遺伝子…!!?」

「アタシだって、死ぬ前に子供を産みたいよ。死ぬんなら、愛する人との子供を産んでから死ぬ」

「…こ…子供…」

「アハハ!さらさら死ぬ気なんてないけどね。でも、何が起こ
るか分からないじゃん?」

「……私は…怖いよ」

「まあ…最初はそうだね…。モロゾフさんに聞いたんだけど、鼻血出して寝込んだって?」


エリシアは船縁に佇むラディルを指差した。


「うん」

「早くさせてやればいいのに」

「させてやればって………?」

「とぼけてんじゃないよ〜。男の鼻血って、あんまり良くないんだよ?親父が言ってた。遺伝子の元になる種を溜め過ぎると鼻血が出るんだって」

「だから?」

「うーん…やっぱ、アタシが言うべきじゃないねぇ…。ゴメン!彼氏に訊いて!」

「ずっこいなぁ。ぱふぱふのことも教えてくれなかったでしょう?ラディルに訊いたら、こ〜んなことされたんだよ」

「アンタ…ホント、可愛いなぁ。ぱふぱふをラディルに訊いたんだぁ。あああ…もうさ、いっそアタシの嫁にならないかい?」

「慎んで遠慮させて頂きます」

「とにかくさ…。アンタがラディルと1つにならないと、アイツ…いつか倒れるよ?それだけは言っておくよ」

「倒れる?鼻血出せば大丈夫なんじゃ…。違うの?」

「違うんだなぁ…これが。アンタも相当だけど、アイツも相当だな…。意地なんて捨てて出せばいいのに。体に悪いだけだよ」

「?エリシア。よく分からないから、ハッキリ言ってもらえないかな」

「ん。じゃ、率直に言おうかな…。本当は奴の口から言ってほしいけど…」


……?


「ラディルに精子を出させな!アイツに倒れられたらアタシが困る!」

「結局エリシアの都合じゃない!」

「命に関わることだって親父もモロゾフさんも言ってたんだよ!いいかい?アンタにしか出来ないことなんだからね!」


そう言って、エリシアは見張り台を降りて行った。
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