ドラゴンクエストV

□揺るぎない思い(全20ページ)
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モロゾフさんの家は広かった。

暖炉があって、テーブルも広くて…。

ただ、一階の奥の部屋は書斎になっているみたいで、物凄い数の書物が置かれていた。


「彼は、私が商人見習いをしていた時の同僚なのです」

「ボルネオと申します。今は、武具の店で下働きをさせて頂いてます」


私達は自己紹介をして、テーブルに着いた。


「王様が変わられたのは、1ヶ月前なのです。ある日突然、城へ女性を招き始め…気に入らない市民や兵士は死刑に…」

「いきなり…ですか」

「それまでは、お優しいお方でした…。私は思うのです。あれは、王様ではないと…。こんなこと…口が裂けても言えませんでしたが…モロゾフが帰って来てくれて、本当に良かった…」

「真意を確かめに行かなければなりませんな…」

「モロゾフ…もはや、私やあなたの知るお方ではないのです…。危険ですよ…」

「アタシが一緒に行くよ」

「助かります」


モロゾフさんは少し考え、奥の書斎を示した。


「ラディル。調べ物を頼みたいのですが…」

「何でしょう」

「思い当たることがありまして…。真実の鏡のことが書かれた書物を探しておいて下さい」

「了解。他には?」


それだけで構いませんよ。あなたやコーマ殿はテドンの村での一件で疲れていらっしゃる。ゆっくりとお休みなさい」


…私は黙って挙手した。


「どうやっても、私とラディルを同じ檻に入れたいんですね」

「おや?嫌なのですかな?」

「嫌ではないですけど…」

「ならいいじゃありませんか」

「なるほど。それでは、私は店の主人にモロゾフが帰ったことを知らせて来ます。クーデターを起こそうか悩んでいた所なのです」

「クーデター…頼もしいですな。宜しく頼みます」


そして…。

モロゾフさんとエリシアは、お城へと出掛けて行った。

探索用に、最後の鍵と消え去り草を持って…。

装備を解除した私とラディルは、書斎の書物をあさった。


「真実の鏡…か。聞いたことないぞ」

「闘技場必勝法…違うな。世界の名産…違うな…」

「バブルスライムとはぐれメタルの関係…いやいや…何処にあるんだ?」

「エリックとオリビアの恋物語…うーん…オリビア…?」

「オリビアの岬のお話だな。読んでみれば?」


私は本を読んでみた。

オリビアという女性と、エリックという男性の恋物語…。

エリックは冤罪で捕まり、奴隷船に乗せられてしま
う。

オリビアは帰りを待っていたのだけど…。

エリックが乗った船が嵐で沈んでしまった。

オリビアは悲しみ、岬から身を投げた。

以来、岬は「オリビアの岬」と呼ばれるようになり…。

岬を越えようとする船を、女性の歌が押し戻すんだって。

エリックが乗った船も幽霊船となって世界をさまよっているという。

オリビアは、行く船行く船を押し戻して、エリックが乗っているのかどうかを調べているのかも知れない。

…か。


「…愛する人と離ればなれになるなんて…。私には耐えられない」

「………」

「オリビア…ずっと待ってたのに…」

「…コーマ。そんなに良かったのか?そのお話」

「うん…。ラディルは知ってたの?」

「ああ。まだ小さかった君には理解出来ないだろうな…って思ってたから話さなかったんだ」

「ふぅん…。ああ、それより…真実の鏡だったわね」

「こっちの本棚にはないみたいだ」

「……ひょっとして…本棚にないんじゃないかな…」


私は、机に散らばる書物をあさった。


「真実の姿を映す鏡…あった!これよ!」

「モロゾフさん…謀ったな…」


私は書物をラディルに手渡した。


「真実の姿を映すこ
とが出来るという鏡は“ラーの鏡”と呼ばれる。先々代の王様が、サマンオサの南の洞窟に封印した…」

「これで王様の化けの皮を剥いでやれるんだね」

「だな。俺達だけで行くのは危険だろうから、二人の帰りを待とうか」

「…しょうがないな…。うん、決めた。モロゾフさんが気を遣ってくれたんだもんね」


私は書斎を出て、家の中を見て廻った。
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