ドラゴンクエストU
□帰郷(全9ページ)
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ローレシアを発って、三日が経った。
俺たちは、アレフガルド大陸のラダトームの街にいる。
宿屋で部屋を取って、すぐ装備品の店に来たんだ。
「鋼の鎧が売ってないね…」
「んじゃ、みかわしの服でいいや。すんませーん」
俺は、みかわしの服で妥協せざるを得なかった。
というのも…。
「鎧を装備してないのだから、出血多量になって当然よ…。もう、心臓が止まるかと思ったわ…」
「ホントだよ…。僕も、早くベホイミを覚えなきゃ…」
「だから、ごめんってば…」
船上で、いつもの通りに戦ってたんだけど…。
また、うみうしのヌメヌメですっ転びーの、態勢を崩した所に、ガーゴイルが二匹も襲って来やがったんだ。
ロトの盾で防御をしたら、背後からガーゴイルが剣で斬りつけてきやがってよ…。
その剣の傷ってのが、意外と深くて船の甲板が血まみれになっちまいやがんの。
「プリンのベホイミで傷は塞がったみたいだけど…無理してでも今日は宿屋で休まなきゃならないんだよね…」
「部屋は狭いし、お風呂は混浴だし…ペルポイの二の舞ね。でも、今回はあなた達、一緒にお風呂にしてくれるんでしょう?違うの?」
「もっちろん!の前に、コーマを宿屋に連れてかなきゃね。ほら、コーマ。宿に戻るよ」
「この歳で介護されるなんて夢にも思わなかったぜ…」
そう。
出血多量のせいで、俺はまともに歩けなかったんだ。
クッキーとプリンの肩に掴まって、宿屋に戻った。
プリンが煎じてくれた薬草を飲んだら、幾分かはマシになったんだけど…。
「今日、丸一日休んだだけじゃ駄目そうだね。明日の昼に、あの城に行こうよ」
「そうしましょうか。お風呂とゴハンにしたら、私とクッキー君は街に情報収集に行くから…あなた、絶対に動いちゃ駄目よ」
「わかってる…。クッソ―……ガーゴイルめ……。いつか必ずミンチにしてやる……」
取りあえず、魔物の体液とかを落とす為に、三人で風呂場に来た。
昼間だからか、ジジイとババアが多かった。
「アレフガルドに温泉町があるって聞いたことあるけど…ここのお風呂、どう見ても温泉だよね?」
「そうみたいね。筋肉疲労に効きそうね」
大浴場ってやつだった。
俺らみたいな旅人が珍しいのか、終始、見られてた。
「もう三日もお風呂に入れなかったもんねぇ…。ああ、かゆいかゆい」
「クッキー君もコーマも、随分と前髪が伸びたわね。後で散髪してあげるわ」
「はーい。れ?コーマ、体洗えないくらいしんどいの?僕、全身洗ってあげようか?」
「んや、湯気でプリンの体がよく見えないなーって残念がってるだけだから、気にすんな」
「ふぅん…そうなの…。バギで内蔵の中身まで綺麗に洗ってあげましょうか?」
「木端微塵になっちまうってば……」
魔物の体液は、意外と簡単に落ちるんだわ。
けど…。
「まぁだ血なまぐさいね…。プリンも手伝って」
「ええ…」
「だから、ごめんってばよ…」
血のにおいって、なかなか消えねぇんだわ。
入浴が終えた時には、俺の背中は真っ赤になっていたらしい。
「なんか背中がヒリヒリすんだけど…」
「たわしを使ったのは間違いだったね」
「たわし!?俺の背中は茶碗かッ!!!さあて、着替え着替え……っと」
着替えを終えて食堂に来ると、そこにいた町人全員がこっち見た。
「一体、なんなんだろうな」
「ザハンの時とおんなじじゃないの?僕らがふたりがかりでプリンを犯してるとか思ってるんだよ。くっだらなーい」
「そう聞いたら、どっと疲れたわ…。さっさと食べて、することやって、さっさと休みましょう…。気にするだけ時間の無駄だわ…」
そうだな。今は、何があっても怒る余力もねぇわ……。
とっとと飯食って部屋に戻って、俺は二台しかないベッドのひとつで横になった。
「畜生…。ついでに、ラダトームの国王を見つけて虐めてやろうと思ったのによ…」
「まあまあ、僕らに任せてよ。プリン、行こうか」
「ええ。ちゃんと大人しく寝てるのよ」
しゃあねぇな……。
後のことはふたりに任せて、俺は大いに休ませてもらった。