ドラゴンクエストV

□プロローグ
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その日は、私の9歳の誕生日だった。


「コーマ。もうすぐお夕飯だから降りて来なさい」

「はぁい」


私が階段を降りた時、お爺ちゃんが帰って来た。


「コーマ…」

「どうしたの?お爺ちゃん」

「…ラディルが…」


私は、お爺ちゃんの暗い表情を見て胸がざわざわして外に出た。

ルイーダの酒場の前で、ラディルと…その叔父さんの奥さんがルイーダさんに頭を下げていた。


「まさか、旦那が魔物に殺られるなんてね…。ちゃんと行く所はあるのかい?」

「アタシの実家があるロマリアに…。大丈夫。ラディルは立派に育てるよ」

「ラディル…。困ったことがあったら、すぐに言って来るんだよ?」

「平気です。ルイーダさん、お世話になりました」


二人が町を出ようとするのに悲しくなって、私は駆け寄った。


「ラディル!」

「コーマ…!どうして…」

「行かないで…。一緒にバラモス倒すって言ったじゃない…」


私はボロボロ涙を流して泣いた。


「コーマちゃん…。ラディルと仲良くしてくれて、ありがとね」


おばさんは頭を撫でてくれた。


「おばさんの都合で、ラディルは連れて行かなければならないんだ。ごめんね」

「…おばさん。少しだけ、いいかな…」


おばさんは私とラディルを優しく見つめ、頷いて町の外へ出てくれた。

日暮れの路上、ルイーダの酒場の灯りだけがゆらゆら燃えている。

ラディルの顔を見つめた。

鼻が赤い。

泣いたのかな…。


「約束、ちゃんと守る」


ラディルは私の手を取って、何かを手の平に乗せた。


「これ…」


指輪だった。

何となくしか分からないけど、魔力が込められた指輪だ。


「お誕生日おめでとう。お守りだよ」

「ありがとう…」


私は左手の中指に指輪を填めてみた。

ぶかぶかだった指輪はサイズぴったしになった!

不思議な指輪だ…。


「いつか魔法が使えるようになったら、きっと旅の助けになるよ」

「なんて名前?」

「えっと…忘れちゃった」


次第に、私達は笑い合った。

いつものように。


「コーマ。僕、きっと君の為に強くなる。そして、君と一緒にバラモスを倒す」

「きっとだよ!」

「うん!だから、さよならは言わないよ。またね!」


ラディルは笑顔で町の外へと走って行った。

私は手を振って、ラディルとおばさんの旅の無事を願った。




それから私は、お母
さんとお爺ちゃんに自分のしたいことを言って、昔は戦士だったお爺ちゃんから剣を習うことになった。

魔法は、お城勤めの魔法使いさんにお願いして教わることになったの。

剣の才能はあるみたいだけど、やっぱり魔法の才能はイマイチみたい。


「16歳になったら旅に出てもいいわよ。王様も期待されてるから、頑張ってね」


お母さんのその言葉を励みに、私はバラモスを倒す為に日々を修行に費やした。


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