ドラゴンクエストV

□試練(全23ページ)
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私は装備屋に入った。

店内を行くと、ラディルがいた。

鋼の剣を手に取り、眺めている。


「ラ〜ディルっ」

「あ、コーマ」

「鋼の剣を買うの?」

「どうしようかな…って。俺には呪文があるけど、MPが切れた時の為に武器が必要かなって。でもなぁ…」


ラディルは値札を見て悩んでいるみたい。


「鋼の剣は1500Gもするんだ…。果たして、そこまで支払う必要があるのかどうか…」

「私も新しい防具が欲しいんだけど…」

「えっ?どうして?」

「どうしてって…防具も強くしなくちゃ」


私はマジカルスカートを翻した。


「!」

「何?」

「い…いや…」


私はラディルの視線を追った。

私の…太股?

そこで、私は初めて気付いた。

ラディルの視線の訳に。


「そ…それ、マジカルスカートだろう?攻撃呪文に強いし、女性ならではの装備品だと思うんだがなぁ…」

「…女性ならでは?」

「い…いや…その…。しまった…

「…今、私の足…見てたでしょ」

「………バレた?」

「モロバレよッ!!!こんな太い足を見られてたなんて…。決めた。新しい防具を買う!
!!」

「あ〜あ…やっちまったなぁ…」


私は店員さんに頼んで、防具を見せてもらった。


「私が装備出来るのは、この魔法の鎧だけみたいね…」

「あ、俺も欲しいな。しかし…5000Gもするのかよ…」

「ラディルはそのままでいいと思う。今着ているの、これでしょ?」


私は、4400Gの値札が付いた“魔法の法衣”という防具を指差した。


「あ、これ…魔法の法衣だったんだな。知らなかった」

「何だと思ってたの?」

「身かわしの服」


身かわしの服も陳列されていたんだけど…。


「身かわしの服は2400G…。値段が全然違うね」

「俺、お宝を見る目ないのかも。盗賊の技を極めたのに…何か、ショックだ」

「まあまあ…。う〜ん…どうしよっかな…」


私は財布の中身を確認した。

3000G入っていた。


「足りる?」

「足りないみたい…。3000Gしかないの」

「そうだな…。店員さん。マジカルスカートの売値を教えてもらえないか?」


ラディルが店員さんにそう対応してくれた。


「マジカルスカートは…そうですね…2480Gになります」

「魔法の鎧を買いたいんだ。下取りしてもらえるか?」
「分かりました」


そういうことが出来るんだ…。

私は魔法の鎧を装備して、マジカルスカートを売却して、更にお金を支払った。


「ラディル、ありがとう」

「残念だけど…仕方ないよな」

「残念って…そんなに見たいの?女の子の生足」

「いやいや…どんだけ不埒な男なんだよ俺は…」

「違うの?さんざ私の足を見てたクセに?」

「コーマは特別だから」

「!!!どーせ私はおデブですよッ!!!足も太いわよ!!!目の毒だったことに、さっき初めて気付いたわよ!!!」

「え…あ!そういう意味じゃなくて…」

「醜い体でごめんなさいね〜。好きでおデブに生まれた訳じゃないわよっ。もう二度とスカートなんて履かないよ」

「違うんだって…」

「私は、普通の女の子じゃなかった。今更気付いた…」


ショックだった。

私は勇者だけど…。

内心では、普通の女の子に勇者という肩書きが付いただけだと思っていた…。


「コーマ…」

「…自分が女の子の前に勇者なんだってこと、改めて自覚出来た。ありがとう、ラディル」

「…そんなつもりじゃないのに…」


じゃあ、どういうつもり?

そう訊きたかったけど…辞めとこう。

何だ
か熱が冷めた。

ラディルの顔を見ると、凄く困った表情だった。


「ラディル。武器は買わなくていいの?」

「あ…ああ…。もう少しGを貯めてからでいいよ」

「それじゃあ、宿屋に行こっか。モロゾフさんが待ってるから」

「そうか。分かった」


私達はお店を出た。
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