貰い物!

□遠い記憶
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「ここ、どこだ…?」

見渡すかぎりの荒れ果てた大地。

灰色の空。

昨日見た青空とは程遠くて、ひどく空気も重い。

視線を落として荒野を見渡すが、草木や花どころか生き物の気配すらない。

ただ、知った顔や知らぬ顔、天人だったものがゴロゴロと横たわっているだけだ。

「何なんだよ。一体何が起きてんだよ」

何がどうなって今こんなところにいるのか分からなかった。

だけど、俺は此処を知っていた。

此処は、戦場。

かつての俺の居場所だった。

「銀時、危ないっ!!!」

後ろから叫び声が聞こえるのと同時に殺気を感じ、反射的に刀を抜いた。

刹那、鮮血が舞う。

いつも腰に携えていた木刀かと思われたそれは、古錆びた日本刀になっていた。

殺気の根源は見事なまでに赤を放ち、倒れた。

懐かしい"斬る"という感触。

こみ上げる"快感"。

「銀時、無事ですか?」

ふいに懐かしい優しい声が聞こえた。

それが誰なのかは一瞬でわかった。

「…先生?!」

「見事ですねえ。無事でよかったです」

「先生、あんたなんでこんなとこにいるんだ?!」

謎だった。

今目の前に先生がいることが。

今目の前で先生が動いていることが。

だってあの日、確かに先生は…

先生は…

先生は、

「私がどうかしたのですか?」

先生はどうなった?

先生は…?



頭の中が真っ白になった。



「あ、あああアあっ…」

先生はどうなったかって?

先生はおかしくなった

先生は笑った

先生は泣かなかった

先生は先生だった

何もおかしくない

おかしくなんかなかった

おかしかったのは、何?
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