アリスの『想い』

□孤独な娘
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昔々、貧しい一つの家がありました。

其処から上がる赤ん坊の鳴き声。
みんながみんな、狂喜乱舞しました。

しかし、肝心のその赤ん坊の姿が見えません。

「赤子はどこじゃ?」

「はて、何処におる?」

それが孤独な娘の始まりでした。





「…………」

大雨の下、土砂降りの中に人影は見当たりません。
しかし、屋根も何も無いのに、一ヶ所だけ雨の濡れていない場所がありました。
「……」

孤独な娘が座っているのです。
誰も見えていません。

親は化け物を産んだと言われ蔑まされ、父は殺されました。
そして母も自殺し、孤独な14歳の娘は独りでした。気味悪がられ、見てもらえず、鏡にすら映らない己の姿。

「呪われてる……」

誰も居ない空間にポツリと声だけが落とされた。












「お前、どうした?こんなずぶ濡れで……」





「え?」



顔を上げると一人の青年がいました。
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