貰い物!
□泣き心
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「こんなところにいて、どうしたの?」
彼女は自分の隣に来て腰を下ろした
「ちょっとね、気分がのらないから散歩してたんだ」
「ふーん、」
彼女に本当の理由なんて言えない
自分の情けない姿を見せたくないし言ったってどうにかなることでもない
少しの沈黙があった
それがなぜか自分の心を締めつける
「ねぇ、ケロちゃん」
心臓がどきりと音をたてた
「何?」
「したんでしょう?」
「なにを?」
「喧嘩よ、夏美さんと」
「してないよ、」
「嘘よ、ケロちゃんは分かりやすいもの」
そんなに顔にでるほど酷かっただろうか?
胸は相変わらず苦しさを増しているけれど
「特に悲しんでる時はすぐに分かるわ」
彼女と目が合う
何でも受け止めてくれそうな優しい目に弱音を吐いてしまいそうになる
まるで割れ物でも扱うようにふわりとした感触が体を包んだ
「ねぇ、ケロちゃん、悲しいときは我慢しなくていいのよ?」
それでも、自分の口は開かなかった
変わりに涙が溢れ出て頬をつたう
「苦しいなら忘れてしまいましょ、ケロちゃんを苦しめるもの全部」
最後に思い浮かんだのは夏美の泣き顔ではなく
なぜか笑った顔だった