貰い物!
□浮遊
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今、万事屋にいるのは俺一人だ。
神楽は定春を連れて散歩に行き、新八は夕食の買い物に出掛けた。
万事屋で一人になるのは、良くある事だ。
時間が経てば、あいつらも帰って来る。
でも……こうやって一人になる時、思うんだ。
あいつらはいずれ、この万事屋を出ていくんだよな……。
新八は道場の復興、神楽は親父と一緒にエイリアンハンターになるという夢がある。
定春だって、もしかしたらあの巫女姉妹が引き取りに来るかもしれない。
あいつらを引き止める権利なんて俺には無いし、寧ろあいつらの夢を、俺は見守っていくべきだとは分かっている……つもりだ。
所詮俺は、一つの場所に留まる事の出来ない、不安定な生活を繰り返しているだけだ。
………昔からな。
良く考えてみりゃ、都合の良すぎる話だ。
昔あんなに罪を犯して来たってのに、幸せに暮らしたいだなんて無理に決まってる。
そんなこと……前から分かり切っていた事なのに。
"白夜叉"って異名は、墓場まで一生くっついて離れないだろうな……。
「銀さーん!ただいま帰りましたー」
「銀ちゃんただいまヨ!!」
「ワン!!」
帰って来たな。
無意味な自問自答を止め、俺は2人と1匹を迎え入れた。
「おー、帰って来たか」
出会いの数だけ別れがある、なんて良く聞くが
俺的には、夢の数だけ別れがあるっていうのも当たってると思うんだよな。
あいつらの夢が叶った時には、俺は笑顔であいつらを送り出してやるよ。
同時に俺はまた、一つの場所に留まる為に浮遊し始めるんだ。
〜END〜