夢のかけら
□3話
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ゴト……ゴトン……
一言、快適。
馬が引いているとは思えないほどかすかな揺れしか感じない。
夕方には目的地のプイエルという街に到着する予定だ。
車内はイスやテーブルがあり部屋が出来上がっていて、きちんとトイレまで一車両ごとに付いているのだ。家具も一つ一つが豪華で優雅な気持ちにしてくれる造りだった。
三人は小さな丸いテーブルを囲むように並ぶイスにそれぞれ腰を降ろしている。
その会話はとても優雅とは言えなかった。
「おめぇ、やってくれるじゃねーか……」
イスに座るやいなや、低い声でスライが唸った。
スライが言っているのは、もちろんひなたが窓を開けて大声で叫んだことだ。
「だって私を巻き込むのが悪いんじゃない?」
ひなたはふんっと外方を向いた。
「けっ。女好きなのはセイだけだろ」
「へぇ、スライが男好きだったとはね。だから俺と旅したかったの?」
セイが言うと、スライの目が更に細くなった。
「誰が男好きだぁ?おめぇが勝手に付いてきたんだろーが」
ムキになったスライに対してセイはククッと笑っている。