夢のかけら
□5話
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この変化は何を意味しているのだろうか。
そんなことをいくら考えても、エイルには答えを見出だす術は持っていなかった。
ただ主の中の何かが変化しているのは、確かだ。
「また外出されましたね」
そうエイルが言えば、まぁね、と短い返事が帰ってきた。
「……カサイドに関した報告書が上がっています」
「読んで」
前回の会議でカサイドの対策について議題が上がった。
前から存在は認識していたが、近頃になり団員の数が急速に増えてきていていると共に、大陸全域といってしまっても大袈裟ではないくらい被害地域が拡大してきている。
「……先日、カナロに現れたようです」
「そう」
主の読みは完璧だった。
「判断があと少し遅ければ、この大陸から逃す所だったでしょう」
最終目標のカサイド団消滅のため、主が考えたまず最初の一手は、この大陸に閉じ込め、海の向こうへの進出を食い止めることだった。
「まぁ、そうだろうね」
先代の主と比べてしまえば、その決断力、先を見据える力の差は歴然だ。
「次の会議も引き続きカサイドのことが議題になると思われます」
「……心底興味ないね。どうしてこう会議に出る奴は皆低能ばっかなんだろうね。まぁ、だからこそ思うように動かせるんだけど」
鼻で笑いを漏らした後、主は窓の外へと視線を移し眩しそうに目を薄めた。
執着と言っていいほどに暗闇を好んでいた主が、だ。
しかしこの広間には今、眩しいほどの陽射しが降り注いでいる。
窓という窓全てから。
それも、先代でさえ眩しすぎるためカーテンを開けさせなかった高い位置にある窓からさえも。
(いったい何があったんだ?)
窓を見上げ考えていたエイルは、主へと視線を戻した。
まだ窓を見上げている主の顔を盗み見る。
冷たく冷ややかな目の主に、暖の色が灯っているように見えるのは、陽射しに照らされているからだろうか。