□勇気を出して5
1ページ/5ページ




ーいつからだったか……


嫌で嫌でムカついてしょうがない筈のアイツが、気になり始めたのは……




ーーーーーーーーー






巡回中、気がつけば木刀を携えた銀髪を探している。


夜、寝るために床に就いて目を閉じれば、奴の稀に見る煌めいた目を思い出す。


甘いもんを見ても、奴をいちいち思い出す。



そして道端で偶然会えば、確実に上がる心拍数。


話してみりゃあ、アイツの言動に一喜一憂して、振り回されて……





ー俺ァいったいどうしちまったんだ。



『ーちっ、冗談じゃねぇや…』



煙草を吸うためにライターを懐から取り出す。



と、その時ーー


ーサササッとこっちに誰かが向かって来た。





『ーー副長!います?』


『ーんだ、山崎。』


『また来てるんですよ!……あの子。』




『……………居ないって言え。』


『はぁ、でも…』


『ーんだてめぇ、ザキのクセに逆らう気かコラ。』


『いや、そういう訳じゃ…』


『ならさっさと行ってこいや!それから、俺ァ一切会うつもりねぇからもう来ねぇようにって言っとけ。』




ーなんだってんだ。


確かに変な奴に絡まれてるとこを助けはしたが…



ーただそれだけじゃねぇか。


おとなしそうな顔して、強引な女だな。


ーはぁ、疲れる…



ただでさえ厄介な悩み抱えてるってのに、なんでこんなことまで気を使わなきゃならねぇんだ……



今しがた吸っていた煙草を灰皿にもみ消し、次の一本を取り出す。




『ー副長、帰りましたよ、あの子。』



『あぁ。お前、ちゃんと言っただろうな?』


『はい、言いましたよ!…んな怖い顔せんでも!』


『ーるせぇ。』



『でも…疑問だなぁ。』


『あ?何が?』


『いや…彼女、可愛いし、ピュアで健気だし、マヨ好きだし…普通だったら…』



『ーよし、てめぇ今すぐ切腹しろ。俺が介錯してやる。』



『ちょっ、なんでぇえええ!?俺別に悪いこと言ってな…やっ、刀抜かないで下さいいい!』





ーあぁそうだよ。
普通だったらこっちもその気になるかもしんねぇよ……



だがなぁ……
俺ァ違うんだよ。



俺ァ……



俺ァ………万事屋のことが…





ー好き、なんだ。









ーまったくもって不本意だがな。







次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ