江戸村でござる

□お江戸物語*才蔵とお艶@辻斬り
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その日…

聞き込みに回っていた岡っ引きの“いわきやの親分”こと才蔵は、番屋を出て家路につく所だった。

いつの間にか雨が降って来ている。

番傘を広げ、番屋にいつも詰めている番人、“番太郎”にお休みの合図の手を上げた。


「…お艶の予想が当たったか…。」

一膳飯屋いわきやを営む、恋女房のお艶が『古傷がシクシク痛むからきっと雨になるよ。お前さん、傘を持ってお行きな。』と言って、無理矢理、嫌がる亭主に持たせた物だった。

「こんな邪魔くさい物…」とブツブツ言い、番屋に置いて聞き込みに回っていたのだが、お艶の予想がピタリと当たったのである。


彼女の得意そうな顔が浮かんだ。

“ほ〜ら、お前さん、あたしの言った通りだろう?”

それを想像し、思わず苦笑いしながら、家路を急ぐ才蔵の足がピタリと止まった。


…?…闇の向こうに誰かがいる…?


…提灯をかざしてみたが頼りない灯りで良く見えない。

「誰か…いるのかい?」

突然闇の中から殺気が膨れ上がったと思ったら、風が襲って来た。

提灯がはね飛ばされ、ボッと燃え上がる。

再び風が襲って来る…!

衝撃と痛みが才蔵の身体に走った…!
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