江戸村でござる

□お江戸物語*才蔵とお艶I第2部
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木枯らしが吹き、枯れ葉が舞い落ちる。

ザッ、ザッ…!

与力の鳩村の屋敷では下男の弥助爺さんが、庭の落ち葉を竹箒で掃き集めていた。

鳩村与力の家には、大きな桜の木がある為、秋には大量の落ち葉が積もる。

いつも鳩村は弥助爺さんに、枯れ葉は肥料にもなるし、そんなにムキになって庭を掃かなくても良いと言ってあるのだが、働き者の彼は聞かないのである。

そんな様子をぼんやり見ていた鳩村夏江は、ため息をついた。

彼女は昨日から隠居所には帰らず、息子の家で今か今かと知らせを待っていた。

昨晩同心の三田村からは、佐七の機転で紀の屋が身の代金を払うとは聞いたものの、もし人間違いだと犯人側にバレたらと思ったら、おちおち眠れなかったのだ。

心配で眠れないと言うような事は、年寄りには堪える。

宗太郎もあれからどうなったか、せめて今何をしてるかぐらい知らせてくれば良い物を…!

全く気が利かないったらありゃしない…!
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