江戸村でござる
□お江戸物語*籐恋歌
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あれから、もう何年経つか……
若いと言うより、まだ幼さの残る振袖新造だった高尾。(※太夫候補の若い遊女で、普通の若い遊女より格上である)
……あの時は……そう、確か“雪菜”と名乗っておったな……それが今では、吉原一の高尾太夫……すっかり艶やかに……前にもまして美しゅうなった……
懐に入れた藤の花を取り出し、甘やかな香りを放つその花房をじっと見つめた侍
。
藤の花は、彼女の『…主さん、わちきは覚えてありんすよ……!』の合図。
2人だけに通じる秘められた言葉……
ふふ……ただ一度の出逢いであったのに……きっと、俺の事など忘れている物と思っておったわ……