江戸村でござる
□お江戸物語*才蔵とお艶H決意
4ページ/218ページ
だが、やり始めて見ると、こんな辛い作業はなかった。
信吉愛用の蕎麦包丁を見れば、トントンと蕎麦を切っていた姿が浮かび…
板場の暖簾の奥からは、『お待ちどぉ!』と蕎麦を運ぶお八重が今にも出て来そうな気がする…
…畜生…!押し込みの野郎…!
ひっくり返ったままの銭箱にも血が付いていた。
おそらく、犯人が親子を斬った後、稼ぎを洗いざらい持って行ったのだろうが…。
こんな小さな蕎麦屋の稼ぎなどたかが知れた物なのに。
刀で脅せば充分じゃねぇか…
才蔵は懸命にこすったが、血はなかなか落ちてくれず、彼はイライラし始めた。
…こんなんじゃ、お艶ちゃんが家に戻れない…
何か出来ないかと思ったのに…
俺は…俺は役立たずだ…
悔しさと悲しさがない交ぜになり、才蔵の目が再び涙で滲んだ。
その時、いきなり「そこで何をしておる!?」の声がかかった。