江戸村でござる

□お江戸物語*才蔵とお艶H決意
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だが、やり始めて見ると、こんな辛い作業はなかった。

信吉愛用の蕎麦包丁を見れば、トントンと蕎麦を切っていた姿が浮かび…

板場の暖簾の奥からは、『お待ちどぉ!』と蕎麦を運ぶお八重が今にも出て来そうな気がする…



…畜生…!押し込みの野郎…!


ひっくり返ったままの銭箱にも血が付いていた。

おそらく、犯人が親子を斬った後、稼ぎを洗いざらい持って行ったのだろうが…。

こんな小さな蕎麦屋の稼ぎなどたかが知れた物なのに。


刀で脅せば充分じゃねぇか…



才蔵は懸命にこすったが、血はなかなか落ちてくれず、彼はイライラし始めた。


…こんなんじゃ、お艶ちゃんが家に戻れない…

何か出来ないかと思ったのに…

俺は…俺は役立たずだ…


悔しさと悲しさがない交ぜになり、才蔵の目が再び涙で滲んだ。



その時、いきなり「そこで何をしておる!?」の声がかかった。
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