江戸村でござる・その弐
□お江戸物語・にわか雨
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ぐっしょり濡れて帰った亭主に、お艶は着替えを差し出しながら言った。「こんなに濡れて…いくら夏が近いとは言え、風邪ひくじゃない」
言っている側から、ヘクション!とくしゃみをした才蔵。
「ほら、やっぱり冷えちゃったんだよ。1本つけようね」
だが、彼は立ち上がろうとした恋女房の腕を押さえた。
「いや、酒よりこっちの方があったまって俺には好みだぜ」
ギュッと抱きすくめピトッと頬を彼女に押し付けた。
「きゃあ!お前さん冷たいよ!」お艶はビクッと身悶えする。
「おっ♪可愛い声上げやがる」笑った才蔵は、わざと冷たい身体を押し付けた。「えいっ!もっと聞かせて♪」
「ひゃあ!もう!お前さんったら!」
ジタバタもがくお艶の着物が乱れ、才蔵はますます喜ぶ始末。
「…だから言ったろ?あったまるってよ」
「もう、バカ…!」