江戸村でござる・その弐
□お江戸物語・江戸っ子
(Web拍手小説より)
1ページ/1ページ
お艶はぺし☆と才蔵の手を叩いた。
「いってえなあ…」手をさすり文句を言う。
「だって、危ないじゃないか。今お前さんの耳掃除をしてるのに…」
お艶の膝を枕にした彼は、着物の裾を悪戯し始めたのだった。
「ち、目の前にこんなご馳走置くのが悪い」
才蔵親分は今日は非番。
恋女房に久しぶりに甘えている。
お艶は嫣然と笑った。「お楽しみはあ と で♪」
「俺はなぁ、好きなモノは真っ先に食うんだよ。だからこそ美味いんだ」
「お前さんは気が短いね。あたしは、後に残すクチなの。はい、反対側。」
「江戸っ子は気が短いんだ…えいっ、チンタラ待ってられるけぇ」
彼女の手から耳かきを取り上げ「これは、後あと」と笑う。
「もう、しょうがない親分さんだよ」苦笑する女房に「そんなトコにも惚れてるんだろ?」才蔵は、ヌケヌケと言った。
「…バカ…」彼女は赤くなり、袖で彼をぶつ真似をする。
「同じバカなら、惚れなきゃ損ソン…」
それに対するお艶の返事は才蔵に唇を塞がれ声にはならなかった…
春まだ浅い昼下がり。風にも冷たさが残っいる。
…だが、2人の部屋の中だけは初夏のような暑さになった。